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ちゃらーす☆

さて、試合が無い時の戦術記事(笑)


ご存知の通り、現代フットボールのトレンドはスピードとプレッシング。
"コンパクト"という言葉が好かれる時代ですね。

でも、少し前までは"ワイド"なんて言葉が好かれていました。
サイドチェンジするだけで褒められる時代もありました。
それは今でもあるかもしれません。

でも本当にそうなのか。

先日のリオ五輪のアジア最終予選でもしきりに"サイドチェンジ"の声が叫ばれていたので、改めてここについて考察しておきたいと思いました。

「"サイドチェンジ"して、ピッチをワイドに使う事」=「良い事」

考え無しにこんな式が頭の中で成立してしまわないようになりましょう!
※先日の試合含めて、決してサイドチェンジそのものを否定するものではありません。



▼ピッチをワイドに使うという事...
まずはここから考えてみましょう。

ピッチをワイドに使う最たる例を挙げるのであれば、まずはシステム。

4-3-3

なんかが多いですかね。
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こんな具合。
ピッチ上に最も満遍なく人を配置出来るシステムと言っても過言ではないかと思います。

3トップの両サイドがタッチラインを踏むくらいまでピッチ幅いっぱいに開く。

これによってもたらされるものは、ウィングが1対1の局面を作りやすいという事です。
大きくワイドに開いたウィングプレーヤーに対応するには、基本的にはサイドバックが対応します。(4バックの場合)

そこまでCBがカバーに出るわけにはいかないので、マークは必然的にサイドのプレーヤーが開いて対応します。
すると、守備側は横に間延びした状態になります。

攻撃側から見ると、ピッチをいっぱいに使うという事は、一人一人の受け持つエリアが広くなるという事です。
同時に、味方との距離が遠くなる事を意味します。

従って、味方との連携で崩すのが少し難しくなります。
(パスの距離が長くなれば当然成功率は下がります)

つまりは、個々の能力で打開する事が求められる。
ウィングのポジションに強力な個人技を持つ選手を擁していれば、そこで徹底して勝負するだけで大きなチャンスを作り出せます。

相手も間延びを引き起こしていますから、カバーリングも遅れます。


かつてモウリーニョが率いたインテルなんかはそんな感じでしたかね。
モウリーニョはこのシステムが好きでした。
今は時代の潮流に合わせたシステムを使っていますが、かつては後ろでがっちり守って両ワイドの強力な個で点を取ってしまうという。


しかし、守備側がこのワイドなポジショニングに付き合ってくれれば勝負するスペースも生まれますが、現代ではボールサイドに絞って、"コンパクトに守る"事が主流になっていきます。
それによって、勝負するスペースが限られていきます。


▼逆サイドを捨てたボールサイド守備...
現代のフットボールはこちらが主流かと思います。

ボールサイドに守備の人数をかけて、逆サイドの選手は中央に絞ってきます。
つまりは逆サイドは一旦捨てるわけです。

当然、サイドチェンジをされればスペースがありますが、サイドチェンジはボールが届くまでに時間がかかります。
なのでそのパスが通るまでの滞空時間中に移動すれば大きく崩される事はなく、再びボールサイドに人数をかけて守る。

この対応を繰り返せば、サイドチェンジで大きく崩される事もないと。

※しかし、このサイドチェンジのボールスピードが早ければ守備側がスライドする前に攻撃を仕掛ける事が出来ます。その為、ジェラードのような超弾道のロングパスはそれだけで脅威になり得る訳ですね。

ただ、守備側もスライドにはかなり体力を消耗しますから、そもそもサイドチェンジをされないように、ボールサイドで厳しいプレスをかけます。

質の高いサイドチェンジを蹴る隙を与えない訳ですね。

攻撃側がワイドに人を配置していて、守備側はボールサイドにだけ人を配置しているのであれば、ボールサイドにおける攻守の人数は、守備側に軍配が上がります。
守備側は、この数的優位を使って、ボールサイドで取り切ってしまおうという訳です。


すると困った攻撃側。

今度は攻撃側もボールサイドに寄るようなチームが見え始めます。


▼今や攻撃すらボールサイド...
小さな頃、ボールに群がっている時代がありました。
ボールが移動するとみんなで揃って移動。

それが段々とポジションについて学び、ピッチを広く使う事を覚えていきます。

"ボールサイドに寄るのは良くない"

フットボールをやってきた人間の多くがそう思っているかと思います。

でも現代のフットボールに正解は無い。
ボールに寄って攻撃を展開する事が正解になり得る事がある。

それは、マンチェスターシティなどに見られる、ショートパスで組織的に攻撃を組み立てるチームで採用されるようになってきました。

フットボールにもだいぶ戦術が浸透してきた現在、いかにして数的優位を作り出すのか、いかにしてスペースを生み出すのか。
各チーム、これを追及するようになってきました。


守備側がボールサイドでコンパクトに守る事で数的優位を作り出し、相手にはスペースを与えないような対応が見られるようになった事は前述した通りです。


そして、今や攻撃さえも"コンパクト"にする事で、局面で数的優位を作り出そうという戦略を取るチームが出てきました。
7c0775c4-s
これはプレミアリーグのトッテナムVSマンチェスターシティ。
左から右に攻める白のトッテナムが向こうサイドでボールを持っているシーン。

この時、攻撃側も、守備側も、みんな半分より向こうサイドにいるのがわかります。

トッテナムは細かいパス回しで局面を打開しようとして向こうサイドに密集し、シティはそのパスワークをやらせまいと同じく向こうサイドに守備網を敷いています。


このように、ピッチをワイドに使うことが必ずしも正解ではなくなっているのが現代フットボールです。
"ワイド"と言えば聞こえが良いですが、それも裏を返せば"間延び"とも取れます。

逆も然り。
"コンパクト"と言えば聞こえが良いですが、裏を返せば"狭い"とも取れる。

結局は使いようです。



▼一つ一つのプレーの意味と効果を考える...
戦術と各プレーは自チームと相手チームとがあって効果的なのか否かが決まります。

例えば、シャビアロンソやジェラード、日本で言えば中村憲剛といった、鋭いサイドチェンジを持っている選手がいれば、相手のスライドが追いつく前に逆サイドを攻略出来ます。
ワイドな攻撃が生きる訳です。

逆にメッシやダビドシルバ、日本で言えば香川真司のような細かいステップとワンツーで密集を抜け出るような選手を中心に据えていれば壁パス要員を密集させてしまった方が良い場合もあるわけです。
それから、守備に切り替わった時にすぐにプレスをかけられるメリットもあります。
ショートカウンターを狙うチームであれば、攻撃もコンパクトにした方が効率的ですね。


相手はワイドに来るのかコンパクトに来るのか。
相手の出方によっても効果は異なりますし。


ワイドな展開に持ち込む事=正解

この時代は終わりました。
局面によってはサイドチェンジが攻撃に停滞を生むことだってあるわけです。


サイドチェンジを見た時、それが局面を打開するサイドチェンジなのか、局面をリセットするサイドチェンジなのか。

チームの中心選手を見て、ワイドとコンパクトなフットボールのどちらを展開するのか予想したり。

これで少し、フットボールを見る目が肥えると思います♪
偉そうに失礼しました(笑)


メモメモ♪