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「簡単にはいかない相手だぞ。」



いつもより少し緊張感が高まっているロッカールームで、佐藤勇人がチームメイトに告げた。


勇人「J2降格で、チームが解体したように見えるが...ピッチに立つ選手は間違いなく一流だし、監督も一流。そして、何より"勝者のメンタリティ"を持って臨んでくる。」


早くも訪れた大一番。
強敵、名古屋グランパスを迎える。


外国人3人もいつもと違った空気を感じ取っていた。


優也「今日はドゥーさんが不在だ。頼むぜ多々良!」



多々良「うす。」


キャプテンであり守備の要、近藤をケガで欠いて臨む。
代わりに3バックのセンターに入るは⑤多々良。

いつも以上に気合が入る。

一分の隙も無い。
近寄りがたい空気すら感じるほどに...



熊谷「(今日はスタメンだ...ただ、実力かって言われればまだまだ怪しい。壱晟が不在なだけだ。ここで真価が問われるぞ...!)」


初スタメンの⑮熊谷も気合が入る。


そして、この男も...






西野「(いつまでも皆に助けられているわけにはいかない...)」




ヤマト「行くぞっ!!!」




【システムのマッチアップ】
myboard
黄:ジェフ
3-2-2-2

赤:名古屋
3-4-3


▼前半戦 Kick Off


立ち上がりから名古屋が前に出る。
積極的に前からプレス。


ジェフに襲い掛かる。


名古屋の最前線に構えるのは佐藤寿人。


寿人「(懐かしいなぁ...このスタジアムでの試合もだし、"ジェフ"そのものが...)」


自身がジェフに在籍していた頃は、フクアリは無かったが、やはりこのクラブに対する想い入れはある。
しかし、その目は鋭かった。


寿人「......でも、おれも挑戦している身だからね。...突き倒す。」



ジェフの3バックに素早いアプローチを繰り返す。

名古屋の3トップは佐藤寿人、永井、押谷。


数的同数で圧力をかける狙い。

名古屋はボランチもかなり高い位置を取ってくる。



多々良「互いに敵陣でボールを奪いたいって事か...!」



しかし、ジェフのビルドアップのスキルは明らかに向上していた。


エスナイデル「わかっているナ...。相手のプレスをどう剥がせば良いのカ。」



GK佐藤が積極的に前に出てポジショニング。

更に、味方のボールの位置に合わせてしきりにポジションを取り直し、パスを要求する。



優也「タカハル!俺を使え!!」



ボールを受ける。



トラップ。


しかしこれを簡単には蹴らない。



「くレ!!!」



相手のプレスの隙間に顔を出したアランダに。


横パスに縦パスを組み込む事で、名古屋のプレスの的を絞らせない。



敵将、風間監督も少し曇った表情。


風間「.........むぅ...」



左サイド、⑨ラリベイにルーズなボールを送る。

これを競ったあと、セカンドボールに対して素早い反応を見せたのはジェフ。
ここから鋭い縦パスがバイタルに位置する⑪船山に入る!


背負う⑪船山。


船山「(........お!)」



そこに走りこんだのはエースナンバー。


ヤマト「くれ!!」



⑪船山の丁寧な落としを受けると、迷わず右足を振り抜く!








ギュンッ!!



鋭く低弾道のシュートを放つ!!








「!!?」



GK楢崎が横っ飛び!










しゅん....



シュートがわずかに左に逸れる。





実況「あーーーーっと!!!惜しい、惜しいーーー!!!」




ヤマト「...くっ.......!」






絶好のチャンスをものに出来ず、顔を歪める。



ヤマト「...こーゆー所をきちんと決めきらないと.....!」







序盤の名古屋のプレスを掻い潜り、調子を上げていくジェフ。


ゲームのペースを握る。





しかし、名古屋も黙ってはいない。



9分。


ジェフのコーナーキックからの攻撃を名古屋が耐えると、前線にすかさずロングボール。

これを受けに降りた㊳永井がDFと入れ替わり前を向くと一気に駆け上がる。





優也「...ヤベェな......枚数足りてねぇ!!」



名古屋の3トップが襲い掛かる!



㊳永井が中央を運びながらタメを作ると、一度外に開いてから一瞬のスピードで中央にカットインしてきた⑪寿人にパスが出る!



ジェフのDFラインの裏を取る!






GK佐藤が前に出る!



優也「くっ...!」








⑪寿人の右足から放たれたシュートが....









枠の右に外れた。






寿人「!!?」




優也「おし!!危ねぇ...!」





カウンターから完全に崩された形だった。

しかし、何とか命拾いしたジェフ。


GK佐藤の圧力がわずかに⑪寿人のシュートコントロールを狂わせた。




ここからはジェフが再びペースを握る。





18分。


敵陣で名古屋の横パスを奪う!




ヤマト「ここだ!!行くぞ!!!」





すぐに攻撃に転じ、一気に人数をかけてゴール前になだれ込む!






楢崎「...くっ.......どんだけリスクかけてくるんだ...!!」





インサイド右でボールを受けた⑩町田が早めにクロスを送る。









「素晴らしいボールだヨ、ヤマト!!」







実況「中央に待ち構えるのは.......ラリベイィィィ!!!」








ピシャリと合ったクロスを、⑨ラリベイの頭が捉える!










貰った!!








ぐん!!





腕が伸びる。









楢崎「....ふっ!!」







バシィ!!






このシュートを左手一本でかき出す!!







ラリベイ「...!!」








実況「.......!!....と、止めてみせた楢崎ーーーーーー!!!!!」






起き上がり、汗を拭うGK楢崎。



楢崎「さすがにヤバかったぞ....!」







エスナイデル監督はテクニカルエリアで頭を抱えていた。



エスナイデル「.....あれが決まらないのカ...!」





スタンドがざわついていた...



「あれが長く日本のゴールマウスを守り続けてきた男か...」



名古屋に活力を与えるプレーだった。





しかし。



ジェフの気持ちは折れない。




⑪船山は常に⑨ラリベイとの距離間、動きを確認しながらポジションを取っていた。
⑨ラリベイが作ったスペースに移動する。
⑨ラリベイの次のパスコースへ移動する。

その中で、サイドの裏のスペースを常に狙う。


高いラインを敷くジェフは、最終ラインから最前線への距離が近い。

一本のパスで裏を取るチャンスは多分にあった。


船山「(今だ!出せ!!)」



⑪船山の動き出しにすかさず㉝西野からフィードが送られる。

この動きによって名古屋のラインは押し下げられる。
そこからジェフは敵陣でのプレーに持ち込む。

特に左サイドでは、⑮熊谷がタメを作りながらチャンスを窺う。
裏を取った後にすぐ失う事無く、ボールの落ち着きどころとして機能していた。



熊谷「(ウチはサリーナスが高い位置を取る分、ここで下手な失い方をすると手痛い...ボールを失わないように相手を押し込めつつ、失った時にはすぐさま潰しにかからねぇと...神経使うぜ...!)」



落ち着き払ったようにボールを動かす。
ボールを持つ姿勢も良い。






そして。









熊谷「................もちろん、狙ってるけどな...!」






トン...







中央へルーズなボールが出る。





パスミスか?








しかし、ゴール前に猛然と飛び込んでくる影!







「ヤマト!!!」







ズシャァァ!!



スライディングでこれに合わせる。







ヤマト「届け!!」










.......しかし、これはわずかに届かない。







地面を叩いて悔しがる⑩町田。




ヤマト「........クソ!!」








なかなか点が取れない。



前節も、押し込んだ前半に先制点を挙げられずに、後半に先制点を献上した。







ピーーーー!!







サポーターも不安そうに見つめる中、左サイドでフリーキックを獲得した時既に、時計は40分を回っていた。






キッカーに㉑サリーナスと⑪船山。
二人がコミュニケーションを取る。







「..........ここだ...」

ゴール前、一人呟く。







キッカー二人がセットポジションに。









「.......何度もチャンスはあったハズだろ...」







㉑サリーナスがチョンと⑪船山にパスを出す。
これを止める。

㉑サリーナスがクロスの態勢!









「...惜しいじゃ何も変わらないんだぞ!!!」









素晴らしいクロスが中央に送られる!








ジャンプ一番、⑨ラリベイのヘディングが届かない...!








「俺が.........」





船山「...合わないか...!?」








「.....俺がやる!!!!」







⑨ラリベイの跳んだすぐ後ろ、マークを振り切って飛び込む!!












ザシュ!!!









ヘディングシュートがゴールネットに突き刺さる!!









楢崎「.................!!」

GK楢崎が立ち尽くす。









会場アナウンスがゴールを告げる。









実況「西野ぉぉぉぉぉぉぉーーーー!!!!!」












西野「......やった...」







黄色いゴール裏が飛び跳ねる!


『うおぉぉぉ、西野ーーーーー!!!』








背番号㉝が揉みくちゃにされる...!






「やりやがったなコイツ!!」







『西野!!西野!!!西野!!!』






西野「...へへ......!!」



ゴール裏からのコールに応えて、少し照れ臭そうにガッツポーズを送った。








時計は44分。




ジェフ千葉先制。




1-0











しかし。




名古屋のキックオフ。


ここからルーズなボールがジェフ陣内に送られる。



ジェフの最終ラインにズレが生じる...






裏に抜けられる!








多々良「マズい!!!」





慌てて戻るジェフの守備陣。







名古屋が右サイドからフリーでクロスを上げる!!









...かと思われたが。












ズシャァァァ!!








このクロスは黄色のスライディングにカットされる!











優也「.......!!...へへ、やるじゃねぇかよ...タカハル!!」

 



鋭い眼光で顔を上げる。












西野「俺が....皆を助けるくらいにならないと...!!」









続く




 ※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の分析はいつも通り行っておりますので試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。