▼この記事を読むのにかかる時間/約6分
ハーフタイムが明ける。
「前半は良い形。これを継続して臨む事。」
「ただし、攻撃が完結していない点は修正しなくてはならない。やがて相手は脅威を感じなくなる。その時、カウンターを食らう危険に晒されることになる。」
監督から告げられた話は至極シンプルだった。
何かを伝えるというのは難しい。
事細かに伝えるあまり、情報量が増えてしまって、結局言いたい事が何も心に留まっていない事もよくある。
かといって、言葉を少なくし過ぎれば何も伝わらない。
本当に伝えたい事にフォーカスして、それが上手く伝わるのかどうか。
それは、求心力だったり、それまでの関係性だったり、カリスマ性だったり。
だが、その危機感は選手も感じ取っていた。
ヤマト「...............確かに、このままずるずる行けば必ず一発食らう。」
⑩町田の表情は固かった。
支配率70%の状況に、決して満足はしていなかった。
熊谷「サイドから何度か良い形は作れてる。後は精度と中に入る人数だ。こぼれ球を含めて意識しておきましょ。」
しかし。
マズいと思っていても防げない事があるものだ。
▼後半戦 Kick Off
後半の並びを見てジェフは一瞬困惑する。
「並びが違う!」
前半、思うような戦いが出来ていなかった横浜は、システムを変更して後半に臨んでいた。
3-4-3
一応3-4-3と呼ぶべきか。
しかし、最終ラインは5バックに限りなく近かった。
ジェフはそこまで慌てる事もなくしっかりとボールを回していた。
ただ、横浜の3トップが前半よりも圧力をかけてきた。
そこまで慌てるほどの事ではなかった。
中盤は比較的スペースがあったから。
ただ、中盤にボールを入れる事が出来ても、その先が無かった。
しっかりと守備を固められ、アタッキンサードへの侵入はなかなかに苦労していた。
すると53分。
恐れていた事態が起こる。
ジェフの攻撃を跳ね返されると、中盤で⑭イバにボールが収まる。
ここをワンツーで⑭イバが右サイドのスペースを抜ける!
この時まだハーフウェイライン。
グーッとドリブルで運ぶ。
対応は③近藤。
近藤「(必ず左足で切り替えてくる.........こいつに縦へ突破しての右足はねぇ...!!)」
すると、③近藤の予想通り左足で切り返してきた!
ーーーーーーーー狙い通り!
すかさず③近藤の足がボールを捉える!
しかし。
ガッ!!
近藤「!!?」
ボールを奪い切れない!
しかし、ボールが流れた所に戻ってきた㊲ボムヨンが足を出す!
ボムヨン「貰った!」
ガッ!!!
ボムヨン「!!!?」
これも奪えない!!
優也「.......野郎....どんな球際して......!!」
若狭「優也君!!来るぞ!!!」
ドシュ!!!
⑭イバが左足を振り抜く!!!
反応するGK佐藤!!
優也「..............っ!?これは......!!」
ファサ.......
実況「ご.............ゴーーーーーーーール!!なんとなんと、先制は横浜FCだーーー!!!!」
エスナイデル「(......................................クっ.....!)」
GK佐藤も拳を握る。
優也「あの野郎.......手前でちょうどバウンドするシュートを打ちやがった.......!」
ヤマト「大丈夫だ!まだ慌てる時間じゃない!!」
しかし。
実況「ゴォォォォォォォォォォォォォル!!!!横浜FC、電光石火の追加点ーーーー!!!!」
若狭「.......うそ.........だろ.............」
1失点目からわずか2分後の出来事だった。
1失点目はそこまで慌てるようなものではなかった。
⑭イバという強烈な個に食らった単発の一撃。
大丈夫。前半の流れさえ取り戻せればひっくり返せる。
そう思っていた。
しかしこの2点目で一気にチームはパニックを引き起こす!!
無理をしてでも点を取りに行くのか。
これ以上の失点はなんとしてでも避ける為に、一度自分たちのペースを取り戻すのか。
どちらが正しいというわけではない。
ただ、それぞれの思いがバラバラになりかけていた。
完全に息を吹き返した横浜はここぞとジェフに襲い掛かる。
積極的にプレスもかけてくる。
パニックを引き起こしているジェフはこれに上手く対処出来ない。
なんとかプレスを掻い潜っても、攻めどころが見つからない。
前半ジェフがリズムを掴んでいたサイド攻撃。
横浜は5バックにする事でサイドの守備を厚くしていた。
途端に攻め所を失ったジェフ。
なんとか崩そうと無駄に難しいプレー、難しいパスを選択するように。
加えてイージーミスも多い。
もはや歯止めは効かなかった。
実況「あーーーーーっと、またしても横浜ーー!!!強烈なシュートがジェフゴールに突き刺さったーー!!
ここで0-3。
失点の度に交代カードを切っていく。
だがそれも実らず、時間と失点だけが積み重なる。
選手たちの目に、魂はこもっていなかった......
そんな選手たちを見て、監督も言葉を飲み込んだ。
この試合から自ら何かを感じ取らないと未来は無い。
そう考えていた。
.......................ただ、サポーターは闘っていた。
闘い続けていた。
『WIN BY ALL』
ーーーーーーこの言葉の意味を。
スタンドで見ていた佐藤勇人と岡本昌弘、ベンチで戦況を見つめていた羽生直剛が握った拳は震えていた。
試合終了
0-4
横浜FC勝利
エスナイデル「............このまま終わると思うナ。このまま終わろうと思うナ。フットボールは明日も続いていく。」
自分に言い聞かせているのか。
チームに言い聞かせているのか。
最後にボソリと監督が呟いた一言が、やけに意味深げだった。
Fin
※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の分析はいつも通り行っておりますので試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。
ハーフタイムが明ける。
「前半は良い形。これを継続して臨む事。」
「ただし、攻撃が完結していない点は修正しなくてはならない。やがて相手は脅威を感じなくなる。その時、カウンターを食らう危険に晒されることになる。」
監督から告げられた話は至極シンプルだった。
何かを伝えるというのは難しい。
事細かに伝えるあまり、情報量が増えてしまって、結局言いたい事が何も心に留まっていない事もよくある。
かといって、言葉を少なくし過ぎれば何も伝わらない。
本当に伝えたい事にフォーカスして、それが上手く伝わるのかどうか。
それは、求心力だったり、それまでの関係性だったり、カリスマ性だったり。
だが、その危機感は選手も感じ取っていた。
ヤマト「...............確かに、このままずるずる行けば必ず一発食らう。」
⑩町田の表情は固かった。
支配率70%の状況に、決して満足はしていなかった。
熊谷「サイドから何度か良い形は作れてる。後は精度と中に入る人数だ。こぼれ球を含めて意識しておきましょ。」
しかし。
マズいと思っていても防げない事があるものだ。
▼後半戦 Kick Off
後半の並びを見てジェフは一瞬困惑する。
「並びが違う!」
前半、思うような戦いが出来ていなかった横浜は、システムを変更して後半に臨んでいた。
3-4-3
一応3-4-3と呼ぶべきか。
しかし、最終ラインは5バックに限りなく近かった。
ジェフはそこまで慌てる事もなくしっかりとボールを回していた。
ただ、横浜の3トップが前半よりも圧力をかけてきた。
そこまで慌てるほどの事ではなかった。
中盤は比較的スペースがあったから。
ただ、中盤にボールを入れる事が出来ても、その先が無かった。
しっかりと守備を固められ、アタッキンサードへの侵入はなかなかに苦労していた。
すると53分。
恐れていた事態が起こる。
ジェフの攻撃を跳ね返されると、中盤で⑭イバにボールが収まる。
ここをワンツーで⑭イバが右サイドのスペースを抜ける!
この時まだハーフウェイライン。
グーッとドリブルで運ぶ。
対応は③近藤。
近藤「(必ず左足で切り替えてくる.........こいつに縦へ突破しての右足はねぇ...!!)」
すると、③近藤の予想通り左足で切り返してきた!
ーーーーーーーー狙い通り!
すかさず③近藤の足がボールを捉える!
しかし。
ガッ!!
近藤「!!?」
ボールを奪い切れない!
しかし、ボールが流れた所に戻ってきた㊲ボムヨンが足を出す!
ボムヨン「貰った!」
ガッ!!!
ボムヨン「!!!?」
これも奪えない!!
優也「.......野郎....どんな球際して......!!」
若狭「優也君!!来るぞ!!!」
ドシュ!!!
⑭イバが左足を振り抜く!!!
反応するGK佐藤!!
優也「..............っ!?これは......!!」
ファサ.......
実況「ご.............ゴーーーーーーーール!!なんとなんと、先制は横浜FCだーーー!!!!」
エスナイデル「(......................................クっ.....!)」
GK佐藤も拳を握る。
優也「あの野郎.......手前でちょうどバウンドするシュートを打ちやがった.......!」
ヤマト「大丈夫だ!まだ慌てる時間じゃない!!」
しかし。
実況「ゴォォォォォォォォォォォォォル!!!!横浜FC、電光石火の追加点ーーーー!!!!」
若狭「.......うそ.........だろ.............」
1失点目からわずか2分後の出来事だった。
1失点目はそこまで慌てるようなものではなかった。
⑭イバという強烈な個に食らった単発の一撃。
大丈夫。前半の流れさえ取り戻せればひっくり返せる。
そう思っていた。
しかしこの2点目で一気にチームはパニックを引き起こす!!
無理をしてでも点を取りに行くのか。
これ以上の失点はなんとしてでも避ける為に、一度自分たちのペースを取り戻すのか。
どちらが正しいというわけではない。
ただ、それぞれの思いがバラバラになりかけていた。
完全に息を吹き返した横浜はここぞとジェフに襲い掛かる。
積極的にプレスもかけてくる。
パニックを引き起こしているジェフはこれに上手く対処出来ない。
なんとかプレスを掻い潜っても、攻めどころが見つからない。
前半ジェフがリズムを掴んでいたサイド攻撃。
横浜は5バックにする事でサイドの守備を厚くしていた。
途端に攻め所を失ったジェフ。
なんとか崩そうと無駄に難しいプレー、難しいパスを選択するように。
加えてイージーミスも多い。
もはや歯止めは効かなかった。
実況「あーーーーーっと、またしても横浜ーー!!!強烈なシュートがジェフゴールに突き刺さったーー!!
ここで0-3。
失点の度に交代カードを切っていく。
だがそれも実らず、時間と失点だけが積み重なる。
選手たちの目に、魂はこもっていなかった......
そんな選手たちを見て、監督も言葉を飲み込んだ。
この試合から自ら何かを感じ取らないと未来は無い。
そう考えていた。
.......................ただ、サポーターは闘っていた。
闘い続けていた。
『WIN BY ALL』
ーーーーーーこの言葉の意味を。
スタンドで見ていた佐藤勇人と岡本昌弘、ベンチで戦況を見つめていた羽生直剛が握った拳は震えていた。
試合終了
0-4
横浜FC勝利
エスナイデル「............このまま終わると思うナ。このまま終わろうと思うナ。フットボールは明日も続いていく。」
自分に言い聞かせているのか。
チームに言い聞かせているのか。
最後にボソリと監督が呟いた一言が、やけに意味深げだった。
Fin
※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の分析はいつも通り行っておりますので試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。
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