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「アウェイが課題なのは俺たちもわかってるから」ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



エースナンバーの悲痛な叫びだった。

しかし、その課題をなんとか克服しようとアウェイ2連戦に臨んだ愛媛とのゲームは敗戦。

「やはり変われないのか......」

そんな不安がチームをよぎる。




エスナイデル
「臆するナ。相手は非常に良いチームだが、それは我々も同じ事ダ。
これは挑戦ダ。挑むものがある事ほど幸せな事は無イ。
必ず成長して返って来るんダ。」




前半Kick Off



序盤から両チームプレスのかけ合い。
非常に厳しい圧力の中でのゲームになる。

リーグ1位、2位の得点力を持ったチームの対戦だが、早い段階で両チーム共に決定機を迎えるもなんとか凌ぐ。



だが立て続けのファールで、早くも⑮熊谷がカードを貰ってしまう。

時計は前半16分。




熊谷
「(く......この時間帯で1枚貰うのはキツイ.....勇人さんの二の舞じゃないか...!)」




千葉を発つ前、勇人にかけられた言葉を思い出すーーーーーーーーーーーーーーー



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勇人
「俺たちのポジションはゲームを左右するポジションだ。前節は俺が退場したばかりにゲームを難しくしてしまった...だが皮肉な事に、最もカードを貰いやすい役割でもある。潰しはガッツリ行け。ただ、つまらないファール、つまりは遅延行為とかそういったものはダメだ。

........頼んだぞ。」
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熊谷
「俺がピッチを去るわけにはいかない........!」






その後、ゲームは膠着するが、ボールポゼッションを上げていたのは徳島の方。
ポゼッションを相手に譲る珍しい展開だった。


ジェフは3バックである徳島の弱点、サイドの裏のスペースを執拗に攻める。
何度か⑪船山が陥れていた。


そして迎えた前半アディショナルタイム。




右サイドでボールを引き出した⑪船山。
相手に止められてしまうも、後方で控えていた⑩町田がこれを拾うとダイレクトで前線へスルーパスを送る!




⑪船山が外で引っ張り出した相手DFラインの隙間に一本のパスが突き刺さる。
そして、狙いすましたかのように抜け出したのは⑨ラリベイ。






GKと1対1を迎えると、滑り込みながら左足を振る!







041501941061











ザシュ!












ラリベイ
「Gracias、ヤマト!!」








実況
「ゴォォォォォォォォォォル!前半アディショナルタイム!試合を動かしたのはやはりこの男!エースストライカーのラリベイだーーーー!!!」






自身に娘が誕生した事を祝い、ゆりかごダンスを披露。
これでかなりゲームが楽になった。









~ハーフタイム~





チームの雰囲気は悪くない。
ただ、ピッチコンディションと気温、湿度、風。
環境面での苦戦はあった。




エスナイデル
「今日はピッチの状況が良くない上に、相手が相手ダ....
相当な消耗戦になるだろウ...



.....だが。」












エスナイデル
「..............キツイ時、苦しい時にこそ顔を上げて、ゴール裏を見なさイ。

力になるハズダ。」







後半Kick Off






前半から見受けられたが、徳島は㉚溝渕の所を攻め立ててきた。
そもそもサイドチェンジを有効に使われて揺さぶられていた事もありながら、彼の守備面での未熟も含めてピンチを招くシーンは多かった。




65分。
徳島の早いリスタート



これもサイドチェンジからジェフの右サイドにボールを送られると、対応した㉚溝渕がかわされてファーサイドにクロスを送られる。




しっかりと合わせ、叩きつけたヘディングシュートがゴールを襲う!!











バシィィ!!!












「!!?」










実況
「ビッグセーブゥゥゥ!!!!!叩きつけたヘディングシュート!!難しい処理もなんとかはじき出した佐藤優也ぁぁぁ!!!」




優也が力強くガッツポーズ。




ボムヨン
「ナイス!!優也くん!!!」







優也
「....当たり前だ。

"アウェイ2連戦で結局白星挙げられませんでした"
なんて通用しねぇ。



........ウチの⑩番が啖呵切ってんだからな。」






サイドのスペースを埋める為に、73分には⑪船山を下げて⑳若狭を投入。
5バックにして守備を強化。




何としても同点に追いつきたい徳島は徐々に圧力を強めてくる。





ジェフが押し込まれる時間が長く続いた。





ボールを奪っても、なかなか攻撃に移れなくなってくる。




ヤマト
「はぁ........はぁ.......

(相手は相当人数をかけてきてる...その分スペースなら前線に有り余ってるんだ。
でも、体力的にもう前に出ていける選手が.......)」




しかし、ジェフがボールを奪い⑩町田がボールを持っていると、右サイドを猛然と駆け上がってくる影。










「ミゾ!!」







溝渕
「ぜぇ........ぜぇ.............!」





ボールを引き出し、何度も何度も敵陣にボールを運んでいく。

カットインして左足を振り抜く。



しかしこれはわずかに枠の左に抜ける。






実況
「あぁーーーーーーっと、惜しい!!!追加点にはならずーーー!!!...........ん?」





一瞬ピッチに倒れこんで悔しがると、すぐさま起き上がりダッシュで自分のポジションに戻っていく。





実況
「溝渕はもうポジションに戻っていますね.......この時間帯でこのわずかな所をサボらないか......!」






溝渕
「ぜぇ........ぜぇ................おれには....何がある.....」






溝渕
「足が速いとか、クロスが上手いとか、組み立てが上手いとか、背が高いとか。何かしら特徴があれば監督は使いやすい。状況に応じて最適な選手を起用出来る。でもおれは...........」



かつて⑪船山に言われた言葉を思い出していた。




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船山
「お前、つまんねぇ選手になったな。最初の方が良かったよ、ガツガツしてて、ギラついてた。」


溝渕
「.........................!!」
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溝渕
「俺が何を武器としていくのか、まだよくわかならい。でも明らかにやれる事がある。
はぁ.....はぁ..........思い出せ。
目の前でいつもタカユキ君が何をしていた?
最初から最後まで、走り抜いていたじゃないか.....!」




㉚溝渕の目に魂が宿っている。




溝渕
「ぜぇ.......ぜぇ.........
吐いても走るぞ.....

思い出せよ。
自信を持てよ。

俺の目の前を走っている先輩と同じメニューをこなしてきたろ.....!





.................流経大柏の意地を見せてやるよ!!」







その時、ゴール裏で自分を応援している、彼の後輩たちが目に入った。

ふっと笑みがこぼれる。







溝渕
「へへ。滾るぜ..............!」










船山
「ふん.....少しはマシになったか。」






ゲーム終盤、チームの疲労はピークだ。








熊谷
「はぁ....はぁ..........

ちっ......だいぶ足に来てやがる....
あと少しだってのによ....

空っぽになりそうだ........」



だがここでハーフタイムの監督の指示を思い出す。

ふと顔を上げてゴール裏を見た。




.....そこには、大汗をかいて声を張り上げ、チームを心配そうに、でも必死に応援するサポーターの姿があった。







熊谷
「はぁ....はぁ。

へへ、空っぽになったもんは..........なんとか埋めてもらえそうだ..........

そんな心配そうな顔しないでくれよ。
まだ闘えるから。」




ふぅーーーーーっと大きく息を吐きだした。





熊谷
「............一緒に白星持って帰ろうぜ!!」










全員が走る。





足を攣っても走る。








我らのエースナンバーもまだプレスに走る。



そしてすぐに戻る。



マイボールになったらすぐさま前線に走り出す。



ボールをキープして味方のサポートを待ち、全体のラインを再び敵陣に押し戻す。



鬼のようなアップダウンをただひたすらに繰り返す。









ヤマト
「ぜぇ.......ぜぇ.......ぜぇ........
(吐きそうだ.....倒れそうだ.....でも...




あのゴール裏を見ればまだ戦える.....!
まだ走れる....!!)」




⑩町田が叫ぶ。











ヤマト
「.............行くぞ!!みんなが待ってる!!!」














そして.....









ピッピッピーーーーーーーーーーーー!!!









ジェフがクリアした瞬間、終了のホイッスルが鳴り響いた。


そしてその場に倒れこむ選手たち。







胸を上下させて、全員が肩で息をしている。



空っぽになった体が、充実感で埋まって行くのを感じる。













「"WIN BY ALL"...................か.....。」








天を仰いだ背番号⑩が、一人そう呟いた。










Fin



 ※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。