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~ハーフタイム~



基本的には引いてブロックを形成してカウンターで攻めて来る山口を相手に、なかなか効果的な攻撃を繰り出す事が出来ずにスコアレスで折り返す形になった。


しかし、この展開はエスナイデルのプランの範疇でもあった。
ベンチからロッカールームへ向かいながら後半のプランを組み立てる。




エスナイデル
「(スコアレスか...だがここで見るべきは0失点に抑えた事ダ。前半に失点する事無く折り返せたのなら、得点数はさほど問題にはならなイ。

何故なら後半、得点出来ると信じているからダ゙)。



そう思うと、立ち止まってチラリとゴール裏に目をやる。




エスナイデル
「...................後半は彼らに向かって攻撃が出来ル。」






~後半戦~




エスナイデルの思惑通り、後半は少しギアを上げた展開になる。
次第に良い攻撃が増えていく。


何度もゴールに迫る。



しかし、⑪船山のループシュートはクロスバーに阻まれ、グラウンダーのクロスに合わせた⑧清武のシュートは枠を逸れる。




やや怪しい雲行きかに思われたが、その空気を切り裂いたのはエースナンバーの左足だった。




57分




中央のこぼれ球をダイレクトで左足に合わせると、これが見事にゴールに吸い込まれる。






ヤマト
「よし!!完璧!!」






実況
「ゴォォォォォォォォォル!!先制はホームジェフ千葉ーー!!⑩番町田がボレーで合わせたぁぁぁ!!!!」




歓喜に沸くスタジアム。
ベンチではエスナイデルを始めとしたコーチ陣も力強くガッツポーズ。




エスナイデル
「よシ!!そうだヤマト!!!」




1-0





この後もジェフは試合を優位に進めていった。


ピンチらしいピンチを迎える事なく、時計はすでに85分を回っており、ゲームをクローズする方向で進んでいた。







だが、得点する時もされる時も、それはたった一瞬の出来事だ。









敵陣での球際の争いから抜け出されると、中央のスペースへ侵入を許す。





ここで一気にスピードに乗った山口。


中央ゴール前へスルーパスを通す。






GKと1対1。




その時。







ドン!!








並走した③近藤がファールを避けて足を引いた時だった。



腰が当たって選手が倒れる。










ピーーーーーーーーッ!!!!















主審が力強くホイッスルと鳴らすと、ペナルティスポットを指さす。











『PK!?』









近藤
「おいおいおい、待ってくれよ!!俺は足を引いたぞ!!体が少し接触した程度じゃないか!!これくらいサッカーじゃ普通だろ!!」






しかし当然ながら判定が覆る事はない。








『ふざけんなー!!どこ見てんだ審判!!!』







判定に対する不満も爆発する。






しかし。








『そうじゃねぇだろ!!お前らの声は誰に届けたいんだ!!
相手選手か?審判団か?


違うだろ!!



選手たちに届けたいんだろーが!!!』







気持ちはわかる。
文句を言いたい気持ちは。



しかし、それでも気持ちを押し殺して、とにかく選手の背中を押したい。
そんなサポーターでありたいと。








ゴール裏から、更に一段階ギアを上げた声援が送られる。









『ゆ・う・や!ゆ・う・や!!』








守護神を後押しする。

終盤にPKストップした讃岐戦の光景が思い起こされる。









しかし。











PKを止めるのはそう容易ではない。






見事なコースに沈められ、同点に追いつかれてしまう。












しかしまだだ。



まだ戦いは終わってはいない。







ここで一段と声が大きくなる。





だれよりも早く、そして大きな声。














それは、ベンチからだった。









エスナイデル
「クソ!!!!


まだダ!!
まだ戦うゾ!


絶対に下を向くナ!!!」









荒ぶっているように見える。

しかし、その言葉には熱が込められていて、情熱的だった。







エスナイデル
「上に行きたいんだろウ!
昇格したいんだろウ!!

簡単な道じゃないゾ!
前節も、今節も、苦しい事なんてこれから山ほどあル!!!


全てを懸けて闘エ!!
気力も、体力も、そして時間モ!!!


それが黄色い血なんだろウ!?
私には流れているゾ!

お前たちはどうなんダ!!」





テクニカルエリアぎりぎりまで出て行って、手を叩いて選手たちを鼓舞する。





ここで⑱矢田を下げて、⑳若狭を投入。




最終ラインから③近藤を前線へ上げて、パワープレーの態勢。





⑨ラリベイに代わって投入されていた㊿指宿とのツインタワーとして、前線にロングボールを放り込む。





だが、ボールを送れど送れど効果的な攻撃にはならない。



㊿指宿、③近藤に加え、両ワイドの⑬為田、⑧清武も前線に張っている為、中盤がすっぽりと抜け落ちている。
セカンドボールが全く収まらなかった。




パワープレーに無理があるのか...?






エスナイデル
「違ウ!!
前線にボールを送って終わりじゃないだろウ!!

パワープレーをするなら全員でダ!!

攻撃も、守備も、全員でやるといつも教えてきたハズダ!!
全体をもっとコンパクトにすル!
後ろをもっと押し上げロ!!

恐れるナ!」







次第に全体がコンパクトになり始める。
選手同士の距離間が縮まっていく。




すると中盤で⑩町田がボールを持ち、⑧清武にスイッチ。



ここで時間を作ると右サイドの⑬為田にボールが渡る。




中央に人数は足りている。




クロスを放る。







ニアで㊿指宿が逸らす。





ファーサイドで③近藤が頭で折り返す。








そして中央。








⑧清武が走りこんで頭で合わせた。









一瞬、時が止まったかのようだった。





綺麗な放物線を描いた。

















エスナイデル
「.............................................」






口は開き、目も見開いたような表情で、その放物線の終着点を見つめていた。




















ゴールだ。











涼しい気候にも額には汗を滲ませ、力強く握った拳を振り上げ、そしてグッと膝を沈める。










地面を蹴って、雄叫びを上げながら、走り出した。



















愛する選手たちのもとに。














そしてスタンドからは割れんばかりの歓声が響き渡る。

















実況
「ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォル!!!!!!!
ここで、この時間帯で取り返したジェフ千葉ぁぁぁぁぁ!!!!

ここフクアリで、やはりドラマが待っていたぁぁぁぁ!!!!!」



 





得点をあげた⑧清武のもとに集まる。
選手が、ベンチメンバーが、スタッフが、そして監督が。










アディショナルタイムのフクアリ劇場。












この日もまた苦境を乗り越えて、勝ち点3を手に入れた。







サポーターへの挨拶に向かう選手たちを見つめながら、エスナイデルが静かに立っていた。














エスナイデル
「すこし苦労があったが....











やはり私の信じた通りだったナ。」












そう呟くと、小さく親指を立て、ゴール裏にむかってニコリと笑ってロッカールームに引き上げた。











Fin



 ※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。