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為田
「まだあと40分ある!」






為田大貴の90分間の挑戦。






アシストを決め、そしてゴールも奪って見せた。






あとは勝ち点3だけだ。









為田
「個人的な結果を残した所で、勝利を収められなければ価値が無い。チームを勝たせる選手こそに価値があるハズだ。」







攻撃に関しては⑬為田が支配していた。




サイドのスペースでボールを引き出し、ドリブル出来るフィールドが用意されていた。



味方が寄り過ぎない事で敢えてスペースを与えているかのようだった。











ーーーーーーーー都内某所。




楽屋。









この試合の観戦で画面にくぎ付けになっている一人の女性がいた。








「あーーー、惜しい!!外の清武選手がフリーだったのに!!」








「それにしても、なんだかバスケの”アイソレーション”みたい。ドリブルが得意な選手に1対1で勝負させる為に他の選手がマークを引き連れて離れていくような....」







スタッフ
「そろそろお時間でーす!準備お願いしまーす!」






「あー、もう、良い所なのにーー!仕方ない。」











スタッフ
「桐谷さん入りまーす!!」














桐谷美玲
「ふぅ、このままジェフが勝ちますよーに!!」













舞台は戻ってフクアリ。




水戸が何とか取り返そうと猛攻を仕掛けてくる。







耐え忍ぶジェフ。









ジェフユース出身の佐藤祥から鋭いアーリークロスが送られるも、㊲ボムヨンがなんとかコーナーに逃れる。




そしてゴール裏を煽る。





沸き立つサポーター。







このコーナーを強烈なヘディングで合わされるも、㉚溝渕がヘディングでクリア。






難を凌いだが70分。






⑧清武のバックパスが短く、相手FWにかっさらわれ、GKオヘーダをかわされて無人のゴールに流し込まれてしまう。







2-1







一気に試合の行方がわからなくなった。










清武
「.............くそ!なんでだ、なんで上手くいかない...!!」









自分自身でも何か歯車がかみ合わない事に苛立ちを覚えていた。









70分 ⑮熊谷 → ⑤多々良







久しぶりの先発復帰の⑮熊谷を下げて、⑤多々良を同じくアンカーとして投入する。





多々良
「俺は俺の出来る事をやるだけだ......!」








システムを4-1-4-1に変え、カウンター時には⑬為田がスペースへ飛び出していった。
相手が飛び込めないドリブルスキルを持つ彼の所で、味方の攻め上がりを待つタメを作れた。





⑤多々良はスペースに対する守備で輝きを見せる。





読みとポジショニングでことごとく相手のパスをカットしていく。

対人で潰しにかかる熊谷のそれとは異なるものだった。








熊谷
「スゲーな...あそこでパスが引っかかるようだと、水戸からすればカウンターの餌食になりやすい。こーゆー守り方もあるんだな....」








多々良
「(この時間帯、俺が持ち場を留守にする事が何より痛い。どっしり構えてカウンターを狙った方が得策だ。)」






終盤には⑨ラリベイを下げて㊿指宿、⑧清武に代えて⑰大久保を投入。





システムを5-3-2にして、最前線に㊿指宿と⑬為田を並べる。







エスナイデル
「(さぁ、約束通りお前は90分間フル出場だゾ。あとはやるだけダ。)」








ベンチから鋭い眼光が⑬為田に送られる。








為田
「ぜぇ......ぜぇ........”90分間は闘えない選手”なんて思われるわけにはいかねぇ。やり切るだけだ!」













決して守備は上手くない選手だ。



序盤にはあまりに不用意に相手を引っ張ってカードを貰っている。




守備をしないというより、教わってこなかったような印象が強い。








だがエスナイデルは許さなかった。

何度も叱責された。




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エスナイデル
「お前は守備が出来ない選手なのか、しない選手なのかどっちダ!?」







「チームの為に走る事も出来ないのか!?」








「自分は上手くない、出来ないからやらないのか!?」










チームメイトはガムシャラに走っていた。


大ベテランの佐藤勇人ですら文句も言わず走っていた。






勇人
「何が大事かなんて人ぞれぞれだけれど、守りたいものを守るために体を張れない、闘えない、走れない選手ってのはどうなんだろうな。おれはかっこ悪いと思うね。」







自分に対して言ったものではなかったけれど、なんだか自分の事のようで妙な気持になった。


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走った。




最前線でのプレスをやめなかった。





相手のGKまで追いかけた。






サイドにボールを散らされても追いすがった。








自分でボールは奪えないけれど、相手を追い込んだり、圧力をかけ続けた。








為田
「ぜぇ.....ぜぇ.....ぜぇ.......(キッツいな....)」








「でも.....」












ピッピッピーーーーーーーーーーーーーー!!!




















為田「やり切ったーーーーーーーーー!」















体はへとへとだが、笑顔がこぼれた。



チームメイトに祝福され、サポーターから拍手を浴び、充実感に満ち溢れていた。

















為田
「はぁ~~~~~~.......」










呼吸を整えるように大きく息を吐き出すと、腰に手を当てて辺りを見渡した。

一瞬ニコリと笑う。


















「良いスタジアムだな........」











Fin



 ※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。