■VS大分トリニータ 第39節
【為田と船山】
九州での厳しいアウェイゲームは続く。
元々苦手としているアウェイゲームだが、そう言ってもいられない。
第39節の大分トリニータとのゲーム。
前半をスコアレスで折り返すと、途中から出場してきた⑬為田に⑪船山がひと声かける。
船山
「…..いつも通りやれ。そんんだけだ。」
フッと笑うと踵を返してポジションに向かった。
為田
「“いつも通り”やれれば十分ですってか。…….光栄ですなぁ。」
ニヤリと笑ってポジションに向かう。
まさにいつも通り左サイドを縦に突破して中央に低いクロスを送ると、これをGKがファンブルして、⑨ラリベイが押し込む形で先制点をあげる。
68分。
相手のロングボールを跳ね返して凌ぐと、中盤の⑱矢田がルーズなボールを前線に送る。
⑨ラリベイがこのボールを上手くヘディングでサイドに振ると、左サイドの⑬為田がボールを受け取る。
ジェフが奪った先制点は⑬為田が縦に突破して生まれた得点だったが、大分DFは、⑬為田のカットインを警戒して中央への進路を塞いでいる。
為田
「(まーたカットインを警戒してやがる.........さっきのがまぐれだと思ってんの?おれはねぇ、縦に突破するのも全然アリなのよ....................何故なら.......)」
スピードの緩急だけで縦へと突破する。相手のブロックを剥がすとすかさず低いクロスをニアサイドに送る!
「それだよそれ.............それを期待してんだこっちは.....!」
ニアサイド、空いたポケットに飛び込んだのは⑪船山‼
ザァァァ!
為田
「何故なら、優秀なゴールゲッターが中央で待ち構えてるからね.........!」
滑り込みながら”点”で合わせた⑪船山のシュートが、ゴールネットを揺らす!
『きたきた船山ぁぁぁぁぁぁ‼』
船山
「ぅおっしゃぁぁぁぁ‼‼」
取って欲しい男が点を取り、チームの盛り上がりは最高潮!
アシストを決めた⑬為田の下へ向かう!
船山
「それだよ、それ!!良いボールよこすじゃねーか!」
為田
「へへ....!かわいいっスか?笑」
81分。
珍しく足を攣った⑪船山が交代を余儀なくされると、交代ボードに記された番号は⑮。
5試合ぶりにこの男が帰ってきた。
熊谷
「(勇人さんがかなり消耗しているから、俺が助けてあげないと........!)」
実際、少しずつ⑦勇人のミスが目立ち始めていた。
勇人
「ぜぇ...ぜぇ...ぜぇ..............」
【フクアリへ繋げ!】
85分には大分に追撃のゴールを許し、得点差を1点とされ油断ならない状況になる。
90分に、⑩町田を下げて⑰大久保を投入。
近藤
「ぜぇ......ぜぇ.....ぜぇ..........!」
息も絶え絶えだが、それよりも痛みが引かず、足が限界に近い状態だった。
近藤
「(...足が軋む..........自分でも笑っちゃうくらいボロボロだな.....でも倒れる訳にはいかねぇぞ.......!)」
勝利はすぐそこだ。
③近藤の状態を気にしながら、最後のひと踏ん張りに⑦佐藤が声をかけようとした時だった。
ボムヨン
「絶対気を抜くなよ!最後の最後まで!一瞬たりとも油断すんな‼」
ボムヨン
「はぁ...はぁ..........負けられないだろ......勝たなきゃいけないだろ......すぐそこなんだぞ‼」
前半は攻撃参加もありながら、㉘乾の守備のカバーにも走り、相手の裏へのロングボールにも対応してきたこの男だって、全身で呼吸している。足にだってキてるに決まっている。
だが誰よりも声を出していた。
ボムヨン
「...そうだろドゥーさん!足が持ちませんでしたとか絶対聞きたくないからな‼」
近藤
「ぜぇ...ぜぇ...へっ......言ってくれる......!」
だが大分も必死だ。ジェフの左サイドを突破すると、クロスを放り込む。これがボックス内に落ちると、大分選手が完全にフリー!
実況
「あぁぁぁっと、ゴールが空いているーーーーー‼」
クロスの対応に出ていたGK佐藤が不在のゴールマウス。
しかし!
ズシャァァァァァ‼
㉚溝渕がこれをスライディングでブロックする!
溝渕
「ぜぇ...ぜぇ...まだだ!次‼」
ボールはボックス内にこぼれている!
ガシィ!
⑰大久保が滑り込みながらボールをかき出す‼
大久保
「集中切らすな!まだ来るぞ‼」
このクリアボールを大分が中盤で拾うと、ボランチの㊾川西が強烈なミドルシュートを放つ‼
近藤
「.....マズイ..............‼」
バシィィ‼
近藤
「はぁ.............はぁ.....................優也........‼」
実況
「こ、ここも佐藤優也だぁぁぁ!大分の同点を許さないーーー‼」
苦しい時間が続くが、集中は切れない。
ここを守り切るメンタリティと、勝ち切る”癖”は確かにチームに根付き始めていてる。
優也
「....まだ終わらねぇぞ.......負けられねぇ...........!必ず守り切って.....全部跳ね返して.....
勝って千葉に帰るぞ‼」
『当たり前だ‼‼』
九州遠征の2連戦。
苦手とするアウェイゲーム。
これを乗り越えれば、ホームゲームが待っている。
そこに可能性を持ち帰れない訳には行かなかった。
仰向けに倒れ、高く突き上げた両腕。
左手には赤い腕章。
そして両拳には勝ち点3が握りしめられていた。
ちらりとゴール裏のサポーターに目をやり、小さく呟いた。
近藤
「はぁ.....はぁ.......はぁ...............さぁ、帰ろうぜ..........................................!」
■VS FC町田ゼルビア 第40節
【負傷離脱】
4連勝で完全に勢いに乗ったチーム。町田ゼルビアとのゲームは得意のホームゲームとあって、スタジアムの雰囲気も良い。得意のサイド攻撃から⑬為田のゴールと、相手最終ラインの連携ミスを⑪船山がさらい、スコアを2‐0とする。
完全に勢いに乗り始めた所だった。
最悪の事態が発生する。
ボムヨン
「いぬい!」
㉘乾が膝を抱えて倒れている。接触は無かった。足をついた時に膝を捻ったように見えた。ピッチに倒れて動けない㉘乾。
勇人
「これは........無理か........」
ベンチに向かって×サインが送られ、㉘乾は担架で運ばれていく。
『WIN BY ALL‼』
㉘乾を乗せた担架がゴール裏を横切る瞬間、ゴール裏からWIN BY ALL‼のコールがかかった!
㉘乾に向けてではない。
㉘乾の想いを受けて闘う、選手、スタッフ、そしてサポーターに向けたコール。
”全てを尽くして勝つ”
慌ただしいベンチで、㉖岡野が呼ばれ、突然の出番に、アップもろくに出来ずに出場となった。
だが、これが38分の出来事であった事もあって、なんとか前半を乗り切る。
近藤
「乾‼」
前半を終え、ロッカールームに下がってきた選手たち。キャプテンの③近藤は負傷交代した㉘乾の下へ真っ先に向かった。そしてそこには、顔をタオルで覆って涙を流す㉘乾の姿があった。
近藤
「.............................................」
ギリッ.......
③近藤はただ、拳を強く握り、奥歯を強く噛みしめていた。
後半に入ると、やはり歯車が狂い始めたのか、ジェフの勢いは失われ、ゼルビアが息を吹き返す。
㉓戸島が得点をあげ、その差を1点とした。
66分。
改めてこの男がフクアリに帰ってくる。
【フクアリ帰還】
⑱矢田 → ⑮熊谷
次節は名古屋戦。契約の問題で⑱矢田は出場する事が出来ない。つまり、この時点で、あとはチームを信じて最終節を待つしかなくなった。
ここから、⑮熊谷が鬼人のごとく凄まじいプレーを見せる!
ゼルビア中盤
「よし!ボールを奪った.....すぐにサイドに展開して.............ん⁉」
ガシィィィ‼
ゼルビア中盤
「ぐ....ぐぉ......‼」
実況
「あぁぁぁぁぁぁーーーーっと!ゼルビアがいざ攻撃に出ようかという所!ジェフ千葉の熊谷アンドリューが襲い掛かるーーーーー‼」
物凄い気迫と圧力を持って潰しにかかる!
ファーストアタックで刈り取れなければ二度、三度。ボールを隣に逃がしたくらいでは逃げ切れない!潰しきるまで襲い掛かった。
あまりの迫力に解説も思わず息を飲む。
解説
「(.................す…すごい…..!)」
熊谷
「フー.......フー...........!」
そして、このリードを最後まで守り切り、連勝を5に伸ばした。
エスナイデル
「(このチームに一番足りなかったもの...........精神力。
窮地に追い込まれて、ようやく良い精神状態を維持出来るようになってきタ。
良いサッカーが出来る自信は暫く前からあっタ。だが今は、良いサッカーをして、そして”勝ち切る”と信じる癖がついてきタ。)」
ニヤリと笑って踵を返す。
エスナイデル
「ふ........私のイメージにここまで近づいた選手たち、そしてチームは初めてだヨ....面白いじゃないカ......!」
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