「岐阜の心臓、庄司がいない」
昨年、フクアリで為す術なく完敗した相手と、再びフクアリで対戦する。
しかし、FC岐阜の心臓として中盤のタクトを振るった庄司は移籍。
更には、技巧派の1トップとしてパスサッカーの攻撃を支えたシシーニョも移籍。
油断こそしないまでも、何としてでも落としたくはない一戦。
しかし、ジェフは前節に退席処分となったエスナイデル監督が1試合のベンチ入り禁止となり、この日はヘッドコーチのギジェルモコーチが担当する事に。
ギジェルモ
「確かにフアンはいないが、君たちがやる事はいつもと変わらなイ。そしてこの1戦に臨む準備はしてきタ。あとはやるだけダ。」
早くフクアリで勝利のチャントを歌いたいサポーターは、前節に引き続きこの日も黄色と緑のフラッグでゴール裏を彩った。
来場者数は9千人を下回ったが、しっかりと声は出ている。
そして、前半戦が始まるーーーー
岐阜は昨年から続くパスサッカーを展開。
そして、前線から積極的にプレスに出てきた。
しかもその岐阜の守備は、この日の対戦の為にしっかりと準備してきたそれだった。
熊谷
「.........これは.....!」
システムは4-3-3の岐阜。
その最前線中央に構える岐阜の1トップが、守備の時には1列下がって⑱熊谷にピッタリつく。
⑱熊谷が動けば、離れずついていく。
マンマークだった。
大木監督(岐阜監督)
「...............その価値がある選手だ。熊谷アンドリュー。だが、ジェフはどうにもアイツに頼りきりだからな。当然他の選手のクオリティも高いが、熊谷が封じられると機能不全を起こす戦術だ。」
更に岐阜の両ウィングは、ジェフのCB2人にボールが入るとグッとプレスに出てくる。
熊谷
「(..............これだと俺がCBの間に下がっていくビルドアップはいささか危険すぎるな....難しいゲームになりそうだ。)」
ギジェルモ
「...............なるほド。しっかりと準備をしてきたというワケダ。ただ、それは我々も同じ事ダ。」
ジェフのシステムは相変わらずの4-1-4-1(4-3-3)だが、インテリオールの2人、㉕茶島と⑳矢田のポジションを、前節から左右入れ替えて臨んでいた。
右利きの㉕茶島を左に、左利きの⑳矢田を右に置く。
矢田
「(やっぱりボールサイドに対してかなりコンパクトに人数をかけてくるな......でも、その為の準備はしてきた!)」
後ろを向いてボールを受けると、右手で相手をブロックして、左足から綺麗なサイドチェンジが⑬為田に向かう!
エスナイデル
「..........左利きの選手が、プレッシャーに来る相手からボールを守る時、左足でボールを持ち、右手で相手をブロックすル。
すると、自然と体は逆サイドを向く形になル。それはサイドチェンジをしやすいという事ダ。
そして右利きである㉕茶島も同ジ。
岐阜がボールサイドに人数をかけるのなら、我々はサイドを変えてスピードを上げル。」
スタンドで試合を見つめているエスナイデル監督が呟く。
スタートは⑱熊谷を封じられた事で岐阜のペースになりかけたものの、サイドチェンジを上手く織り交ぜて次第にジェフがペースを握り始める。
すると17分。
右サイドで⑩町田がタメを作る。
そこから後方にボールを下げると⑤増嶋がダイレクトでDFラインの裏にクロス!
ボールの先には⑬為田!
為田
「うぉ!スゲー良いボール!!」
ワントラップから左足ボレー!!
ビュン!
しかしこれは僅かに枠の左!
実況
「あぁーーーっと!惜しい!!素晴らしい形を作ったジェフ千葉ー!!」
ジェフの攻撃が圧力を増す!
積極的なサイドチェンジからサイド深い位置まで攻略しては、コーナーキックを積み重ねる。
24分。
岐阜GKがキャッチしたボールをSBに転がすと、すかさず⑩町田がプレスをかける!
慌てたSBが前方へルーズなボールを送ると。これに反応した⑱熊谷。
熊谷
「ボールに触れないのはストレスだが.......一瞬で仕事してやりゃ良い話だ!!!」
シュパッ!!
このボールをダイレクトで地を這うグラウンダーのパス!
これが⑨ラリベイの足元にドンピシャ!
解説
「なっ........!!!」
このボールを⑨ラリベイが丁寧に落とすと、そこに走り込んだのは㉕茶島!
右足を振り上げる!
クイッ
キックフェイントで左足に持ち替える。
シュートブロックに滑り込んだDFが通り過ぎる!
ザシュ!!
振り抜いた左足から放たれたシュートが、芝生で滑りながらゴールに吸い込まれた。
実況
「決まったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!茶島が移籍後初ゴールーーー!!!!」
茶島
「っしゃぁぁ!!」
J1からやってきたクールな男が、叫びと共に何度も拳を突き上げた。
為田
「チャジ君マジ上手い!!シュートふかさないよね!」
ラリベイ
「見事だ、チャジ!」
岐阜ベンチでは、大木監督が苦い表情。
大木監督
「.................熊谷め.....やってくれる...!」
フクアリで、ようやく久しぶりのゴールが生まれた。
これで勢いに乗っていける!
しかし、そう上手くはいかなかった。
34分。
岐阜陣内センターサークル付近でボールを持たれると、ジェフの右SB山本の裏のスペースに長いスルーパスが出る。
裏には広大なスペース。
これが通れば一気に攻め込まれる。
山本
「(なんとかクリアしないと.............!)」
増嶋
「滑っちゃダメだ!!マサキ!!!」
右足を伸ばして⑥山本が滑り込むが、僅かに届かず、ジェフの右サイドが完全に崩される。
中央には岐阜のFWが走り込む!
ジェフのDFが戻り切る前にグラウンダーのクロスを送ると、滑り込んだ④エベルトとGKロドリゲスの脇をすり抜け、ゴールネットにシュートが叩き込まれた。
実況
「ゴールーーー!!!一瞬の隙を突いた岐阜!早くも試合を振り出しに戻したぁぁ!!」
解説
「........あの対応は失敗だったな、山本...抜けられたらほぼ失点の場面で、クリア出来るかどうかのスライディングはギャンブル過ぎる。あの場合は飛び込まないでゴールに向かって下がって、少しでも相手の進撃を遅らせるのがセオリー。”DF”のな。
本職ではない難しさはこういったディティールに出てしまうものだ。」
山本
「..............すまん。」
熊谷
「いや、あの位置で万全な状態でパスを出させてしまってる時点でダメだ。前にも責任があるッス。」
この後畳みかけるような岐阜の攻撃を凌ぎ、ジェフもチャンスを作り出したが、1-1のスコアのまま、前半戦を終える。
明確なコンセプトを持っていて、チーム全員が同じものを共有出来ているチームは強い。
清武
「早く出番来ないかな。最近調子良いし、今日のアップでもキックの感触が良い。ウズウズしてきた。」
船山
「さっさと俺を出せ。」
続く
※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の分析はいつも通り行っておりますので試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。
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