追加点を奪いたい内容ではあったものの、得点は1点に留まった。
その表現が正しだろう。
しかし、チームの状態は良かった。
近藤
「晃司!良い出来じゃないか!やられんじゃねーぞ!」
鳥海
「うすっ!!」
優也
「ディエゴ!良い感じだ!上手くゲームのペースをコントロール出来てる。俺たちのサッカーは相当に体力を消耗するからな。ビルドアップで出来るだけ呼吸を整えさせてやるんだ。」
ロドリゲス
「そうだナ。アドバイス、助かるヨ。」
ロッカールームでは各選手よく声が出ていて、互いの連携を高めようと努めている。
エスナイデル
「さぁ。まだまだこんなものではないゾ。不甲斐ないスタートを見せてしまったサポーターに、もっと素晴らしいサッカーを届けル。いいナ!」
気持ち新たに後半戦。
ジェフのペースは衰えない。
50分
左サイドでボールを回すと、⑱熊谷がサポートに寄ってくる。
2ボランチになった事で⑱熊谷が高い位置を取れるようになったからだ。
佐藤勇人に背中を預ける事で。
その⑱熊谷がボールを持つと、中央に視線を送った瞬間、ノールックでハーフスペースの⑧清武にパスを通す!
清武
「(..........さすが。見えてんな!)」
ビュン
ゴール前左45度から放ったシュートは僅かに枠の左へ逸れる。
このシーズン、スタメンからこぼれて何としてでも結果が欲しい⑧清武であったが、その瞬間は訪れる。
64分
右サイドのスローインから、⑪船山がハーフスペースへ飛び出す。
そのまま縦に抜けるとここから中央にセンタリング!
これは繋がらずに讃岐DFにボールが渡るが、エリア内でもたつく讃岐を逃さなかった。
ガッ
後方から忍び寄った⑧清武がプレスをかけるとボールがこぼれる。
すかさず近場にいた⑦勇人がこぼれ球をシュート!
これがDFに当たって、⑧清武の足元に転がってきた。
ボールまであと2m!
クイッ
この瞬間、清武功暉は冷静だった。
飛び込んできたDF、GKをあざ笑うかのようにかわす。
ゴール前2mでよく周りが見えていた。
ぱすっ
無人のゴールにボールを転がすと、ゴール裏が爆発する!!
実況
「きまったぁぁぁぁぁ!!追加点はジェフ千葉!後半、良い時間帯でのゴール――!!!」
清武
「うらぁ!!」
勇人
「おっし!!よくやったコーキ!!」
ここからは完全にジェフのペース。
65分
⑦勇人 → ㉕茶島
フィールドを支配するこの男に敵将も驚きを隠せない。
北野監督
「.............熊谷アンドリュー.....とんでもない才覚だぞ。何故ここにいる。こんな所にいて良い選手じゃないだろう......!!」
アンカーという、孤立したポジションを任される事の多い選手だが、この日は2ボランチ。
相棒を得た事で、何か縛られていたものから解放されたかのように攻守に渡ってゲームを支配し続けた。
熊谷
「攻撃は元々得意だ。だが、守備に磨きをかけた事で高い位置で失ってもすぐに奪い返せる。そうなれば高い位置から攻撃に移れる。そして、フィジカルコンタクトで負ける気がしねぇ!!」
69分には左コーナーキックからのこぼれ球に③近藤が反応。
迷わず左足を振ると相手の手に当たる。
PKだと思わずサポーターが反応しかけた所、⑪船山はボールから目を離さなかった。
ドシュ!!
すかさず右足を振り抜くと、見事なボレーが突き刺さって追加点。
スコアを3-0にする。
船山
「よぉぉーーーーっしゃ!!!」
サポーターも待ちに待った男の得点に盛り上がる!
83分には㉕茶島が相手DFの隙間を縫って左足のコントロールショットを沈め、85分にはセンターサークル付近から⑳矢田がサイドチェンジ。
ボールを受け取った㉗高木がエリア内侵入した所で倒されてPK。
これを⑨ラリベイがしっかりと決めきる。
89分には左サイドでボールを持ってタメを作ると、裏のスペースに飛び出した⑬為田へのスルーパス。
これをグラウンダーで折り返し、ファーサイドで待ち受けていた⑥山本が押し込んで6点目。
最後に不用意な失点こそあれ、久しぶりに退場者なく戦い切った試合は、圧倒的な実力差を見せつける結果となった。
鳥海
「勝てたーーー!良かったーーー!」
為田
「PKのシーン。流してくれても俺が決めてたよ。」
船山
「見てない見てない。誰も見てない。」
矢田
「ははは。良かったよタメ。ナイスプレー!」
何かが上手くいかないと、歯車がかみ合わないと。
不運も重なってスタートダッシュに失敗した事でナーバスになっていた部分もあったが、何とか雲を突き抜けた感はあった。
この試合に帰ってきたベテラン2人が声をかけ合う。
勇人
「ドゥー、お疲れさん!」
近藤
「勇人くんこそ。
なんとか踏ん張れたかな。精神的に難しくなっていく中で、助かったッス。
まだまだこれから。
課題は今のうちに解決して、ここからギアを上げて一気に駆け上がろう......!」
若い選手も増えていく中で、しっかりとその土台を支える2人。
互いの肩を叩き、次の試合へと向かっていった。
Fin
※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。
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