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前半、完全に大宮にペースを握られる展開だった。
滅多に負ける事のないボール支配率でも大宮にリードを許し、得点チャンスも明らかに大宮が上回る。

2度の判定に救われたジェフ。


厳しい展開。

だがそれでも。
どこか自分たちを信じる事が出来ていた。











近藤
「判定だろうが何だろうがとにかく守り切れれば....!」




鳥海
「苦しい時間帯を凌ぎ切れれば必ずこっちの流れになる....!」




増嶋
「俺たちが耐えきれるかどうか...守備陣にかかってる...!」








最後の最後だけはやらせない。
最終ラインの3人が、アイコンタクトで意思を疎通する。



後半に入っても大宮がボールを握る展開自体は変わらなかったが、少しずつジェフがボールを持つ時間が増え始めていく。




48分

中盤でボールを拾ったジェフ。
この日2シャドーの位置に起用された⑥山本が強烈なミドルを放つ!


ブレながら大宮ゴールに襲い掛かったシュートは、GKが間一髪弾き出す!








矢田
「少しずつ.......少しずつで良い!」







後方では守備陣が体を張る。
大宮に何度もゴール前まで迫られるが、シュートを打たれる瞬間には体を投げ出してブロックに向かう。







鳥海
「なんとかここは.................こっちが先に折られるわけには....!」










なかなか得点出来ずに焦れる大宮。
最終ラインで攻撃の組み立てに存在感を示していた⑦三門もチャンス時にはジェフゴール前まで迫る!



激しい攻防!













小島
「はぁ...........はぁ.............アンドリュー....!
.............守備、任せて良いか?」



苦しい展開の中での⑭小島の問いかけに、⑱熊谷は笑って答えた。





熊谷
「.................最初からそのつもりッスよ。」







リスクを負わなきゃ勝てないし、リスクがあるから面白いんでしょ。
⑱熊谷はそう付け加えた。



頼もしいな。



⑭小島はそう感じていた。
ハーフタイムに監督からかけられた言葉を思い出す。







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エスナイデル
「我々のチームには決まりごとがあるし、私の要求もあル。
非常に窮屈に感じる事もあるだろウ。
矛盾した指示であり願いだとは思うガ............

小島秀仁を証明して来イ。」


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それは、難しいミッションの中でも、自分の個性を出してこいという指揮官の要求だった。
愛媛で培った攻撃力。

ゴールに向かう姿勢。





加入当初はどうしてもチームのやり方に慣れる必要があるし、指揮官の要求に応える事で出場機会を得られるのだから、自分を押し殺す部分も生まれてしまう。


しかし、新加入選手へチームのやり方が浸透してきたからこそ、そこに個性を加える事が出来る。






ここから、ジェフが攻撃に打って出た際には、必ずゴール前。
それも、ペナルティエリアの中まで顔を出すようになっていく。



サイド攻撃を主軸とするジェフだが、中央で構える⑨ラリベイに加えて⑭小島が毎回顔を出す。
自分の元へボールが来ない為、なかなかチャンスを迎える事が出来ないが、愚直にこのランニングを繰り返した。





小島
「はぁ....はぁ...........
(正直、守備をサボるわけではないから、守備に加えてここまでスプリントを繰り返すのはしんどい....でも.......!)」












60分


左サイド、㉑サリーナスから縦にスルーパス。
ここに⑳矢田が抜け出す!



完全にフリーで顔を上げる!





タメを作って後方からインサイドを駆け上がってきた㉑サリーナスにスイッチ。
これをダイレクトで中央にクロス!!






中央に飛び込んできた⑭小島!









小島
「ぜぇ......ぜぇ..........俺に出来る事、やってきた事。
それを求められていると思え。
やり切れ。逃げるな。食らいつけ....!!」


















しかし、このクロスは手前のDFにぶつかり、⑭小島の後方へ....






小島
「くっ.........!」














狙ったわけではない。

ただ必死に。
ボールに食らいついただけだ。





執念。
そして執着心。










どうしてだろう。
























そんな想いに引き寄せられるように、ボールは転がってくる。














実況
「な、なんと!!!伸ばした足に吸い付くように小島が後方のボールを足元に手繰り寄せるーー!!!!」






解説
「な.......!見えているハズが無いのに...........!!」













エスナイデル
「...........!!!」





思わずエスナイデル監督も目を見開く!





















だが無理矢理に足を伸ばした⑭小島の態勢は既に崩れている!

その隙を見て大宮GKが一気に間合いを詰めてきた!



















小島
「......................................」


























無心だった。

何かを考えていたわけでも、思いついたわけでもない。
体が判断した。




そんな感覚だった。


















飛び出してきたGKを避けるように、シュートを浮かしてGKの脇を抜く。























そして、ゴールネットが静かに揺れた。






















ギリギリのプレーに体勢を崩してその場に倒れ込むと、グッと握りしめた両拳を天に向かって突き出した。









小島
「はぁ............はぁ................やった......................」
















実況
「ゴォォォォォォォォォォォォォォォォル!!!!!」









続く

※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の分析はいつも通り行っておりますので試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。