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船山
「くそ!なかなか上手く回らねぇ...!」

この日キャプテンマークを巻いた⑪船山も、劣勢を認めていた。

ホームゲームで何とか久しぶりの勝利を飾り、鬼門のアウェイへ乗り込むジェフ。
相手は新潟。

元日本代表が数多く存在し、彼らはやはり輝きを放っていた。

だがそれよりも何よりも、新潟のプレスがなかなかに剥がせない。

ジェフは前節と同じ4-1-4-1のような、アンカー+インテリオール2枚のシステムで臨んだが、新潟の組織的な4-4-2のプレッシングに苦戦。
新潟は基本的には一度リトリートして守備態勢を整え、そこから2トップのチェイシングに連動して全体がボールを奪いに来る、4-4-2の定石とも言える守備を仕掛けてくる。


J2レベルのある程度のプレスなら剥がせるようになったジェフだったが、この新潟のプレスには苦戦を強いられ、上手く前進出来ない時間が続く。


特に、インテリオールの㉕茶島と㉒工藤を低めに設定して、⑱熊谷と近い距離でプレーさせて後方から組み立てるサッカーを試行し始めていたジェフに、新潟のプレスがピタリとハマる。


新潟の2ボランチは下がっていくジェフのインテリオールを容赦なく追いかける。
元来、ジェフは長いボールも積極的に使い、⑨ラリベイのセカンドボールを中盤の数的優位で拾い、敵陣に押し込んでいくサッカーでプレスを外してきたが、インテリオールが下がっていてはロングボールを放り込んだ所で中盤でのセカンドボールが見込めない。

しかし、悩んでいては囲まれる。

苦し紛れのクリアを拾われて新潟の攻撃。

この繰り返しだった。


試合開始早々に⑬為田の縦への突破からグラウンダーのクロスに合わせた⑪船山のゴールは見事だったが、僅か1分後に新潟もサイド攻撃で同点に追いついて見せる。

そこからは新潟ペースで試合が進み、時計は既に30分を回る。


工藤
「(悔しいが新潟のプレスが良い...ウチらは小さなミスを繰り返すようになってきた...マズイな...!)」



すると、新潟が少しボールを下げたのに合わせてジェフが最終ラインを上げた所、2列目からの飛び出しで入れ替わるように新潟が裏を突く!



近藤
「しまった!!!」



完全にフリー!












ガシイ!!!












鳥海
「ディエゴ!!!」




これはGKロドリゲスがすぐさま飛び出してシュートコースを消す事で身体に当てる!
しかしセカンドボールに詰めるのも新潟!









バチィ!!!





だがこれもセーブ!!
その後のシュートもなんとかキャッチし、新潟の絶対的決定機を阻止してみせる!!




実況
「止めたぁぁぁぁぁ!!!!見事な飛び出しで2度のシュートをブロック!千葉のゴールを死守ーーー!!!」








千種(ちぐさ)
「あ、危なかったね酒々井...!」


相変わらずアウェイゲームはDAZNで観戦している千種が、画面から目を逸らさずに隣で一緒に観戦している酒々井に話しかける。


酒々井(しすい)
「...今のは見事なセーブだな、ロドリゲス...
ただ飛び出したわけじゃない。相手が裏に抜け出た時、ボールとゴールを同一視野に入れる事が出来ない態勢だった。それを見てすかさず距離を詰めやがったな...!
相手からしてみれば、ボールに集中していたからGKが飛び出してきている事に気づけなかった。」


守護神の見事なプレーに酒々井は思わず息を飲む。



しかし、そんなGKロドリゲスのプレーもありながら、攻められている状況は変わらない。
それは、ハーフタイムを挟んでも同じだった。
むしろ、後半に入ると新潟の攻撃は激しさを増していく...!



50分


「く.....そ...!」


左サイド、㉘乾が縦への突破を許すと、ニアで新潟のFW矢野が強烈なヘディングを放つ!!





ヒュン




これは何とか枠を逸れる。
しかし、立て続けに新潟の攻撃が続く。



53分
新潟がカウンターから一気になだれ込むと、またも左サイドを突破されてクロス!
そこには完全フリーの矢野!!

ジャンプ一番!タイミングも完璧!
しっかりとミートしたヘディングを放ち、GKロドリゲスはただ立ち尽くすしかなかった...











ガン!!







ロドリゲス
「!!?」




実況
「あぁぁぁぁーーーっと!!!!なんと矢野のヘディングはポストに嫌われるーーー!!!
得意のヘディングシュートの決定機を2度も逸してしまうかー!」


思わず天を仰ぐ矢野。
一方、ジェフは事なきを得た形。


近藤
「...................................」

思わず③近藤も汗を拭う。
肝を冷やした。

ハーフタイムを挟んでも悪い流れを断ち切れないジェフは、なんとか交代で流れを引き寄せたい所。


㊿指宿と㉒工藤を下げ、⑨ラリベイと⑳矢田を投入。


しかし、それでも状況が好転する事はなかった。

ジェフに全くチャンスが無いわけではない。
しかし、圧倒的に新潟がペースをつかんでいる状況。
ジェフの攻撃はいずれも単発に終わっていく。




船山
「はぁ....はぁ.......こうなるとさすがにキツイ....」



近藤
「はぁ...はぁ...中3日での移動ゲーム。ここからかなりしんどくなってくるぞ...」




70分を回った頃には、ジェフの選手たちもさすがに足にキていた。




酒々井
「さすがに厳しくなってくるな...
心肺への負荷は、中3日だろうとそこまで引っ張る事は無い。
問題は筋肉の方だね。
筋肉には明らかに疲労が蓄積する。呼吸は何とかなるかもしれないけれど、足が動かなくなってくる...ましてや完全に押し込まれている展開だと尚更に。」



徐々にプレスがかからなくなる。
そして、更にアクシデントにも見舞われる!



熊谷
「くっ.......これは.....厳しいか...」


⑱熊谷が腰を痛め、負傷交代を余儀なくされる。
最も苦しい展開、時間帯で、チームの核を失う事になった。



すぐさま⑦勇人が交代に呼ばれる。




酒々井
「ここでアンドリューを失うか...
チームの心臓を失うのはかなり痛い....」


流石に苦しいと酒々井の表情も曇っているが、千種は悲観的にはならなかった。


千種
「確かにアンドリューはチームの心臓だよ...
でも、それなら勇人はジェフの魂だから。」




この千種の言葉は、真意を突いていたのかもしれない。
チームは瀕死の状態だった。
でも、そんなチームに入ってきたのは、"キャプテン"だった。



勇人
「どうした!?
もう終わりか?もう走れないか?
そんなタマじゃないだろお前ら。
走りたくても走れない奴だっているんだぜ?」



近藤
「はぁ...はぁ.......
へっ。
言ってくれるよ。」



船山
「ぜぇ......ぜぇ.........
走れるに決まってんだろ...!」













.......劣勢の中、GKロドリゲスがクリアしたボールだった。








船山
「ぜぇ.....ぜぇ......ぜぇ........!」




このボールを、落下地点目掛けて全力で追う船山。
相手が先に落下地点に入っているがお構いなし。





ラリベイ
「ぜぇ...ぜぇ....ぜぇ.....
セカンドボールをなんとカ...!」





新潟が跳ね返したボールに必死に食らいつく⑨ラリベイ!





勇人
「................いいね。」




⑨ラリベイが競ってこぼれたボールに突進していく⑦勇人。






その間、ジェフはボールに触れる事すら出来なかった。
僅かに残った体力を振り絞って追いかけても、そう簡単にボールを奪う事は出来なかった。





しかし、その気迫は確かに相手に伝わっていた。












酒々井
「....................パスミスだ!!!」






ジェフの圧力に気圧されたか、新潟が下げたボールの行方には⑬為田!




為田
「はぁ....はぁ.....
ここは行き切らねぇと...........!!!!」



⑬為田の目が光る!
ボールを持った状態から一気にギアを上げると、そのままゴールに向かって突き進む!!






為田
「(あれだけチェイスした後だ...
恐らくヘルプを待っても厳しい....!!)」






すぐさま新潟の守備陣が止めに向かう!!
しかし⑬為田は止まらない!!




為田
「はぁ....はぁ.....構ってられるかよ...!!!」



迫りくるDFを縦に振り切り、左足を振り上げる!!







山本
「頼む!!!」









左足をコンパクトに振り、ボールの行方を確認した⑬為田が、ゴールの脇を駆け抜けていく。
息は上がっているがその表情は明るい。

駆け抜けた先に待つ、アウェイ新潟まで駆け付けたサポーターの前で、雄たけびを上げた。










実況
「ゴォォォォォォォル!!!!
なんと追加点はジェフ千葉!!劣勢を跳ね返す必殺の一撃!!為田が2試合連続ゴールーー!!!!」




この日もジェフはベンチ総立ちで喜びを爆発させる!
チャンスをうかがって耐えに耐えた守備陣も大きくガッツポーズ!

サポーターの目の前で歓喜の輪を作る選手たちも、全員が肩で息をしている。





ここから、アディショナルタイムを含めた10分間を耐えきったジェフ。
最後は何人もの選手が足を攣る中、終了のホイッスルが鳴り響いた。





画面の前で喜ぶは千種。
飛び跳ねて喜んでいる。
その隣には、ヒヤヒヤする展開から勝利を収めた事に疲れを見せる酒々井。
飛び跳ねる千種を見て下の住人から苦情が来ないかとハラハラしている。








全員で喜び、互いに労う中で、ベンチに下がっていた㉒工藤が⑦勇人を出迎える。

















工藤
「............ほんと、勝つって難しいよね。」





㉒工藤が苦笑い。
⑦勇人がふぅっと一息置いて応える。






勇人
「ここまでしてようやく手に入るんだよなぁ。
楽しようなんて考えてたら怒られるわ...w」

















そう言葉を交わす2人の表情は同じだった。





ジェフ、2連勝。









Fin

※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。


試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。