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「勝てねぇ...」

今シーズンから背番号10を背負う船山からも、思わずこぼれる。



開幕戦を落としたものの、アウェイゲームだった為に割り切れた。
しかし、続く2節、3節はホームゲーム。

かつては絶対的な強さを持っていたフクアリでの戦い。
だが、今となっては"かつては"という言葉を頭に付けざるを得ない。

新潟に1-4。
山口に2-5。

まさに"大敗"と表現できる試合を2戦連続。
それもホームゲームで喫してしまった。


サポーターの状況も刻々と変化していく。
シーズン開始直前には、サポーター団体"粋犬会"がマンパワー不足でサポ連脱退を表明。
直近では、開幕後の試合結果を受けて、一部サポーターの間では監督解任の署名運動まで始まっている始末。



新シーズン開幕直後だというのに、まさにジェフはバラバラになりかけている。




為田
「アンド知ってる?監督解任に向けてサポが署名運動始めるんだってさ。」


熊谷
「あぁ、あれね。まぁ、結果を出せてないのはオレらだし、何ともコメントはしづらいな。気にならないと言えばウソだけど、出来るだけ気にしないように、オレらはピッチに集中しないと。」




敗戦の後には、ピッチの中央に集まり、キャプテンの勇人を中心に円陣を組んだ。



勇人
「このままズルズル行くわけにはいかない。どんな結果になろうとも後悔する事がないように、1つ1つの試合に集中しないと...いいか、次の試合だけを意識しろ!」




今シーズンには並々ならぬ意思を持って臨んでいる⑦勇人だったが、思うような結果が出ずに歯がゆさも大きい。



そんな中迎えた第4節。
水戸ホーリーホックとの一戦。
相手の監督は、かつてジェフで共に戦った長谷部監督。


ジェフは4-1-4-1の布陣を敷き、アンカーに⑦勇人。
インテリオールに⑭小島と、⑱熊谷を据える新しい形。

水戸は4-2-3-1のオーソドックスな布陣。
しかし、中盤はボールサイドに寄せて、逆サイドのスペースへ逆SBの選手が上がって中盤に厚みを持たせる形で連動してくる。


その水戸の中盤の厚さもあって、ジェフはなかなか思ったようにマイボールにする事が出来ずに苦戦。

しかし15分。
試合を先に動かしたのはジェフだった。




左サイド、前線からの守備で⑨クレーべと⑭小島が相手SBを追い込み奪い取る!
ボールを持った⑭小島が冷静に縦のスペースへスルーパスを送ると、この日2列目で起用された⑱熊谷がハーフスペースを取る!



熊谷
「..............ほらよ。」



ボールを受けるとすぐさま後方のスペースへボールを落とす!
そこへ走り込んでいたのは⑬為田!




為田
「ちゃんと見えてんじゃんか!」


すぐさまDFが寄せてくるが、少しタイミングをずらすと狙いすましてボールを転がす!







シュパァ...!







GKの脇をすり抜け、コントロールされたシュートがゆっくりゴールネットを揺らした!










実況
「ゴォォォォォォォォル!!!これはお見事!!ジェフ千葉、為田がDFとGKの間をすり抜ける技ありシュートで先制ーーー!!!!」




為田
「ッッシャァ!!!」



喜びを爆発させる⑬為田はベンチに向かう。
チームとしても、先制点を挙げたのは今シーズン初だ。

期待が高まる。





熊谷
「.....へっ。お礼が聞こえないなぁ。」



アシストを決めた⑱熊谷が祝福を込めた皮肉を送る。




為田
「.........やるじゃんw」





素直じゃない⑬為田は、これまた皮肉を込めた賞賛を送る。
同い年が魅せたホットラインだった。









ここから、少しずつジェフは安定し始める。
⑱熊谷を2列目に起用した恩恵は大きく、セカンドボールへの反応、前線からの守備、そしてボールを収まりどころとして機能する。


一方で、アンカーの⑦勇人が相手への圧力をかける為に度々前線に上がる事で、バイタルエリアが留守になるシーンも見受けられる。

水戸は1トップの後方に控えるセカンドトップが常に前線への飛び出しを狙っており、ジェフは気が抜けない。


また、今シーズン初の出場となったGKの①鈴木の足元の捌きがおぼつかず、判断の遅さから時折ピンチが訪れた。





何とか前半をリードしたまま折り返すものの、53分。
アクシデントで⑱熊谷が離脱。



58分
⑱熊谷 ⇒ ㊱山本




エスナイデル
「......く。ここでアンドリューの離脱は大きいナ...シーズン序盤からこれだけ怪我人が続く事は想定外ダ...!」




スタメン級の選手たちが次々と怪我で離脱する苦しい展開。
しかし、ここ最近ピッチから遠ざかっていた㊱山本も高いモチベーションで試合に臨む!





山本
「(自分の年を考えても、チームの層の厚さを考えても、そう多くないチャンスだぞ...この試合をしっかりとものにして、少しでもチームに貢献しないと...!)」






59分

右サイドの深い位置で裏を取った㊱山本。
そこから落として⑩船山。

ダイレクトで中央へクロスを放り込む!



ガッ!!



中央では真っ先に落下地点に入った小柄な⑭小島が体を張る!
相手をしっかりと押さえ、頭で手前に落とす!




クレーべ
「...ナイスダ...!!」




⑨クレーべの足元にピタリと収まると、すぐさま右足を振り抜くが、水戸がすぐさま反応して体でブロック!
得点には至らない。







クレーべ
「........チッ。なかなか決まらなイ...!」





ここからは試合が拮抗する。
互いにビッグチャンスを生み出せないまま、時計だけが進んでいく。



77分
⑰新井 ⇒ ④エベルト



足が攣った⑰新井を下げて④エベルトを投入。

水戸も交代枠を一気に2枚使って攻撃に出る。
アジリティの高い選手を投入し、特にジェフの右サイドに対面した㊼浅野が抜群のスピードでジェフのDFラインをかき乱す!




田坂
「......くそ。厄介な野郎が入ってきたな...」



怪我で欠場の②ゲリアに代わって右SBを務めた⑥田坂は、ここまでチームに安定をもたらしていた。
1対1での読み合いや、マイボールにした際の落ち着き。
彼が果たした役割は大きかった。


しかし、この時間帯でこれだけクイックネスに優れた選手を相手にするのは苦労を強いられた。




83分
⑥田坂 ⇒ ⑯鳥海



㊼浅野を止めるべく呼ばれたのは⑯鳥海。
交代枠2枚をDFで使い、逃げ切りの体勢。



ラスト、水戸が前がかりになった事で、中盤がスカスカに。
ジェフは度々このスペースでこぼれ球を拾っては攻撃に出てチャンスを見出す。


しかし、いよいよ終わりが見えてきた後半アディショナルタイムに悪夢が訪れる。




互いにボールの蹴り合いが続くと、ジェフ左サイドでボールを持った水戸がクロスを放り込む。
密集地帯になっているジェフのゴール前でシュートを放たれる!









ガシィ!!!










増嶋
「ぉ...らぁぁぁ!!!!」




しかし、ここは⑤増嶋が気迫のブロック!!
身体を投げ出して、しっかりとシュートを防ぐ!!





鈴木
「ナイス!!マス君!!!」




田坂
「...!?まだだ!!!気を抜くんじゃねぇ!!!」




ベンチに下がった⑥田坂が叫ぶ!




長谷部
「...どんな形でも良い...圧力をかけ続けろ!!」




開幕後のスタートダッシュに成功した水戸の選手たちの目は全く死んでいなかった。
こぼれ球をボックス内で繋がれると、ファーサイドに流れたボールを思い切り蹴り込む!!











ガシュッ!!!!










鈴木
「......ぁ.....そんな....」






GK鈴木も反応はしていたが、目の前でジェフのDFの足をかすめたのか、無回転でボールの軌道が変化したのか...

無情にも両掌をすり抜け、ジェフのゴールに突き刺さった。








実況
「ゴォォォォォォォォォォルゥゥ!!!!ホーム水戸ホーリーホック!!最後の最後で劇的な同点弾ーーー!!」




長谷部
「ぅおっしゃーーーーー!!!!!」





いつもクールな長谷部監督も思わず顔面をくしゃくしゃにして雄たけびを上げた。
互いに拮抗したゲームの中で得た数少ないチャンスを、最後の最後で得点に結び付けた形だった。





一方、エスナイデルは顔を覆う。
そして、天を仰いだ。



エスナイデル
「.......何故こうなル...」









ピッピッピーーーーーーーーーーーー!!!!






残り時間でなんとか再度突き放しを狙ったが、そのまま試合終了を迎えた。









為田
「.....マジかぁ...........」



あと少しでこの日のヒーローだった⑬為田も思わずしゃがみ込む。
他のジェフの選手たちも精神的なダメージは色濃く、その場に座り込む選手が多かった。






鳥海
「.....くそ、くそ!0で終わらせる為に投入されたにも関わらず、チームの勝利に貢献出来ないなんて...!」









選手も、監督も。
上手いくいかない事に全員が顔を曇らせる。








その中でも特に、キャプテンを務める佐藤勇人のやり場のない怒りと悔しさがにじみ出た表情が際立っていた。













勇人
「どうしてだ......どうすれば良い........!」

















Fin

※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。