▼この記事を読むのにかかる時間/約6分
実況
「あーーーーっと、後半に入って僅か4分の所!
讃岐が千葉を突き放つ一撃ー!!ハーフタイムを挟んで切り替えたかった所、千葉にとっては痛すぎる失点ーー!!」
画面では追加点に喜ぶ讃岐の選手たちが映っている。
その様子を、微動だにせずに千種(ちぐさ)は見つめていた。
お天気雨という珍しい気候から始まった試合。
ピッチが濡れた事はジェフにとっては幸運かに思われたが、後半早々既に0-2のスコア。
1失点目は、左サイドで仕掛けの体勢に入った⑬為田が止められ、そこから後手に回ったプレスが全てかわされた後、右サイドからすかさずアーリークロスを放り込まれ被弾。
2失点目は、左サイドで仕掛けられたドリブルに対処するも止め切れず、ファーサイドに完全なフリーを作って綺麗に流し込まれた形。
酒々井
「あちゃー...
やられ方がいっつも同じなんだよなー。
サイド攻撃で何回失点すりゃ気が済むんだか...」
酒々井(しすい)は冷静に戦況を見つめる。
とは言え、あまりにあっさりと失点する様に、呆れているようにも見える。
千種はもう半泣きのような表情になっている。
酒々井の自宅に千種が押しかけて試合を観戦する事はもはやお決まりになっていた。
千種の家でもDAZNは映る。
特段、酒々井の家に押し掛ける必要は無いのだが、毎回試合開始1時間前くらいにはやってくる。
...手土産にうまい棒3本ほどを持って。
(基本的に2本は千種が食べる)
酒々井
「(ボクとしてはこの子が遊びに来るのは後ろ向きなんだよな...
この子がボクの事を裏切って、無理やり家に連れ込まれたとでも言いようもんなら、一瞬で人生真っ暗だ...トホホ。)」
やれやれと、諦めた表情で千種を見やりながら、試合の事を振り返っていた。
酒々井
「(立ち上がりが悪かったとは言わない。
むしろ悪くない入りだった。
いつもよりもロングボールが増えていた。
そして、それは決して悪い事じゃない。
サイドの裏のスペースめがけてボールを送って、攻撃陣もしっかりと追えてた。
その上、サイドチェンジも積極的に行う事で、サイドから仕掛けるシーンは多かったハズだ。」
攻撃には手ごたえを感じられる内容だったかもしれない。
しかし、守備の脆さが露呈していた。
自信を失っている事からか、プレスに出ていく判断に迷いがあるし、遅い。
一度引いた方が良いシーンでも、何かにとりつかれたようにプレスに出てはかわされる。
千種
「少し楽観的な...そして自分たちを客観的に見れる人がいると良いのかも。
たぶんちー達が"このままじゃヤバイぞ!"なんて言わなくても選手たちはわかってるし、むしろちー達のヤバそうな雰囲気は選手たちを押し潰しているのかも。
皆責任感あるから、"サポーターに申し訳ない"とか、不必要な力みとか...」
"大丈夫、やれる"
"最後にはきっと勝てる"
そういった思い込みが時には必要であるといった事だろうか...
しかし実現するのは簡単な事じゃない。
すると、54分に交代が告げられる。
㉕茶島 → ㉒工藤
酒々井
「工藤さん...ここで来るか...!」
その2分後だった。
③近藤が右サイドからサイドチェンジを送ると、ボールの行方に㉘乾。
胸トラップ一つで相手のマークを剥がす!
乾
「.........!?」
すると、間髪入れずにGKとDFの間にグラウンダーのクロスを放り込む!!
ニアのDFを越えて、ファーサイドに待ち受けていたのは...
ラリベイ
「...これを無駄にするわけにハ!!」
ザシュ!!!
ボールが届くよりも先に飛び、空中で体勢を作って難しいバウンドにドンピシャのタイミングで合わせ、ゴールを揺らした!!
実況
「ゲットォォォォォォォ!!!」
ラリベイ
「よシ...次ダ!!!」
すぐさまボールを拾って、センターサークルに向かう。
逆転するにはあと2点が必要な状況だ。
ジェフは㉒工藤が入ってから、ゲームをコントロールし始める。
工藤
「(........ジェフはとにかく全体のバランスが悪い...!
もちろん、リスクを負ってプレスを仕掛けしているから仕方がない部分もある。
ただ、もう少し"考えて走らないと"...!)」
チャレンジする所しない所。
自分がどのポジションに立つ事が相手にとってプレッシャーになるのか。
自分がどこに走ればどこのスペースが空くのか。
それを緻密に考えながらプレーしているようだった。
72分
⑪船山 → ⑧清武
75分
⑭小島 → ㊿指宿
立て続けに残りの交代枠も使う。
そして、この交代によって中盤の2ボランチは⑱熊谷と㉒工藤になった。
工藤
「(改めて..........
ここに⑱番が立っているのが違和感だな....w
練習の時からコイツはずば抜けてた。宜しく頼むぜ...!)」
一方、⑱熊谷も特別な感情を抱いていた。
熊谷
「(勇人さんと同じく、語り草になってるオシムさんの下でレギュラー張っていた人...
勉強になる事ばかりだ...!)」
しかし、試合はなかなか動かない。
体力的にも厳しく、互いに全体が間延びし始める。
80分過ぎには早くも③近藤が最前線に張ってパワープレーの構え。
しかし、中盤でセカンドボールを拾えない展開が続く。
87分
前がかりになるジェフに対して、全員で守る讃岐。
讃岐にボールを奪われた瞬間、ジェフの最終ラインの人数が足りていない!
讃岐の選手2人に対して、対応するのは⑱熊谷のみ。
これを決められればほぼ終了のシーンだったが、⑱熊谷がこれをシャットアウト!
テレビの前で酒々井が思わず上手いと叫ぶ。
酒々井
「相手2人を同時に視界に入れられるように置き、パスコースを遮断しながら少しずつシュートの角度が無くなるように調整しやがった...
相手が迷った所をすかさずつついた。
こんな事まで出来るのかよ...!」
しかし結局、これを逆転、むしろ同点にすら持ち込むさえ出来なかった。
GK優也を上げてまで押し込もうとした連続セットプレーも実らず、そのまま終了のホイッスルが鳴り響いた。
ピッピッピーーーーーーー!!!!!
終了を告げられ、がっくりと肩を落とし、膝に手をつく選手たち。
なかなか顔を上げる事が出来なかった。
為田
「ぜぇ...ぜぇ...
(ちくしょう...どうすりゃ良い...!)」
小島
「(自分が出ても状況を変えられない...その無力さに腹が立つ...)」
うなだれる選手達の背中に覇気は無かった。
そして、出口の見えないトンネルにいるような感覚が不安を大きくする。
自分たちのサッカーに絶対的な自信を持っていた。
しかし、それが上手く行かない。
信じるべきものを見失いかけていた。
酒々井
「信頼ってのは口で言うほど簡単じゃないんだよね。
思い描いた通りにならないと、人は不安を覚える。
その不安から逃れるように要因を探し始める。
その矛先が、監督に向かない事を祈るよ。
サポーターが監督を疑い始めると、その空気は選手たちに伝わる。
疑念を抱き始めたらなかなか止まらない。
まぁ、とは言えサポーターなんてそんなもんだ。
チームの為に自分の感情を抑えろなんて、虫の良い話だな。」
酒々井は淡々と語る。
何が正しいのかを教えてくれそうで、いつも最終的には人それぞれだと答えを避けるように話を終える。
きっと、これ以上聞いてみた所で、これ以上の答えが出てこないのが猿楽場酒々井(さかくばしすい)という男だった。
そして、それを知っている千種だからこそ、自分の想いを言葉にして返した。
千種
「ちーは....いいんだもん。
応援するって決めたから。
みんなこうするべきとか、 サポーターはこうあるべきとか、そーゆーのよくわかんないし。
でも、自分はこうありたいなって思ったりはする。
ちーはちーの事嫌いになりたくないから。」
それを聞いて一瞬少し面食らったような表情をした後、酒々井はふふっと笑う。
そして場面はピッチに戻り...
チームメイトに一通り声をかけたあと、工藤がロッカールームに向かいながら呟く。
工藤
「大丈夫。このチームはまだまだ強くなれる。
だからこそ俺はここに来たんだ。
...俺が身につけてきたものを全てジェフに...!!」
Fin
※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。

実況
「あーーーーっと、後半に入って僅か4分の所!
讃岐が千葉を突き放つ一撃ー!!ハーフタイムを挟んで切り替えたかった所、千葉にとっては痛すぎる失点ーー!!」
画面では追加点に喜ぶ讃岐の選手たちが映っている。
その様子を、微動だにせずに千種(ちぐさ)は見つめていた。
お天気雨という珍しい気候から始まった試合。
ピッチが濡れた事はジェフにとっては幸運かに思われたが、後半早々既に0-2のスコア。
1失点目は、左サイドで仕掛けの体勢に入った⑬為田が止められ、そこから後手に回ったプレスが全てかわされた後、右サイドからすかさずアーリークロスを放り込まれ被弾。
2失点目は、左サイドで仕掛けられたドリブルに対処するも止め切れず、ファーサイドに完全なフリーを作って綺麗に流し込まれた形。
酒々井
「あちゃー...
やられ方がいっつも同じなんだよなー。
サイド攻撃で何回失点すりゃ気が済むんだか...」
酒々井(しすい)は冷静に戦況を見つめる。
とは言え、あまりにあっさりと失点する様に、呆れているようにも見える。
千種はもう半泣きのような表情になっている。
酒々井の自宅に千種が押しかけて試合を観戦する事はもはやお決まりになっていた。
千種の家でもDAZNは映る。
特段、酒々井の家に押し掛ける必要は無いのだが、毎回試合開始1時間前くらいにはやってくる。
...手土産にうまい棒3本ほどを持って。
(基本的に2本は千種が食べる)
酒々井
「(ボクとしてはこの子が遊びに来るのは後ろ向きなんだよな...
この子がボクの事を裏切って、無理やり家に連れ込まれたとでも言いようもんなら、一瞬で人生真っ暗だ...トホホ。)」
やれやれと、諦めた表情で千種を見やりながら、試合の事を振り返っていた。
酒々井
「(立ち上がりが悪かったとは言わない。
むしろ悪くない入りだった。
いつもよりもロングボールが増えていた。
そして、それは決して悪い事じゃない。
サイドの裏のスペースめがけてボールを送って、攻撃陣もしっかりと追えてた。
その上、サイドチェンジも積極的に行う事で、サイドから仕掛けるシーンは多かったハズだ。」
攻撃には手ごたえを感じられる内容だったかもしれない。
しかし、守備の脆さが露呈していた。
自信を失っている事からか、プレスに出ていく判断に迷いがあるし、遅い。
一度引いた方が良いシーンでも、何かにとりつかれたようにプレスに出てはかわされる。
千種
「少し楽観的な...そして自分たちを客観的に見れる人がいると良いのかも。
たぶんちー達が"このままじゃヤバイぞ!"なんて言わなくても選手たちはわかってるし、むしろちー達のヤバそうな雰囲気は選手たちを押し潰しているのかも。
皆責任感あるから、"サポーターに申し訳ない"とか、不必要な力みとか...」
"大丈夫、やれる"
"最後にはきっと勝てる"
そういった思い込みが時には必要であるといった事だろうか...
しかし実現するのは簡単な事じゃない。
すると、54分に交代が告げられる。
㉕茶島 → ㉒工藤
酒々井
「工藤さん...ここで来るか...!」
その2分後だった。
③近藤が右サイドからサイドチェンジを送ると、ボールの行方に㉘乾。
胸トラップ一つで相手のマークを剥がす!
乾
「.........!?」
すると、間髪入れずにGKとDFの間にグラウンダーのクロスを放り込む!!
ニアのDFを越えて、ファーサイドに待ち受けていたのは...
ラリベイ
「...これを無駄にするわけにハ!!」
ザシュ!!!
ボールが届くよりも先に飛び、空中で体勢を作って難しいバウンドにドンピシャのタイミングで合わせ、ゴールを揺らした!!
実況
「ゲットォォォォォォォ!!!」
ラリベイ
「よシ...次ダ!!!」
すぐさまボールを拾って、センターサークルに向かう。
逆転するにはあと2点が必要な状況だ。
ジェフは㉒工藤が入ってから、ゲームをコントロールし始める。
工藤
「(........ジェフはとにかく全体のバランスが悪い...!
もちろん、リスクを負ってプレスを仕掛けしているから仕方がない部分もある。
ただ、もう少し"考えて走らないと"...!)」
チャレンジする所しない所。
自分がどのポジションに立つ事が相手にとってプレッシャーになるのか。
自分がどこに走ればどこのスペースが空くのか。
それを緻密に考えながらプレーしているようだった。
72分
⑪船山 → ⑧清武
75分
⑭小島 → ㊿指宿
立て続けに残りの交代枠も使う。
そして、この交代によって中盤の2ボランチは⑱熊谷と㉒工藤になった。
工藤
「(改めて..........
ここに⑱番が立っているのが違和感だな....w
練習の時からコイツはずば抜けてた。宜しく頼むぜ...!)」
一方、⑱熊谷も特別な感情を抱いていた。
熊谷
「(勇人さんと同じく、語り草になってるオシムさんの下でレギュラー張っていた人...
勉強になる事ばかりだ...!)」
しかし、試合はなかなか動かない。
体力的にも厳しく、互いに全体が間延びし始める。
80分過ぎには早くも③近藤が最前線に張ってパワープレーの構え。
しかし、中盤でセカンドボールを拾えない展開が続く。
87分
前がかりになるジェフに対して、全員で守る讃岐。
讃岐にボールを奪われた瞬間、ジェフの最終ラインの人数が足りていない!
讃岐の選手2人に対して、対応するのは⑱熊谷のみ。
これを決められればほぼ終了のシーンだったが、⑱熊谷がこれをシャットアウト!
テレビの前で酒々井が思わず上手いと叫ぶ。
酒々井
「相手2人を同時に視界に入れられるように置き、パスコースを遮断しながら少しずつシュートの角度が無くなるように調整しやがった...
相手が迷った所をすかさずつついた。
こんな事まで出来るのかよ...!」
しかし結局、これを逆転、むしろ同点にすら持ち込むさえ出来なかった。
GK優也を上げてまで押し込もうとした連続セットプレーも実らず、そのまま終了のホイッスルが鳴り響いた。
ピッピッピーーーーーーー!!!!!
終了を告げられ、がっくりと肩を落とし、膝に手をつく選手たち。
なかなか顔を上げる事が出来なかった。
為田
「ぜぇ...ぜぇ...
(ちくしょう...どうすりゃ良い...!)」
小島
「(自分が出ても状況を変えられない...その無力さに腹が立つ...)」
うなだれる選手達の背中に覇気は無かった。
そして、出口の見えないトンネルにいるような感覚が不安を大きくする。
自分たちのサッカーに絶対的な自信を持っていた。
しかし、それが上手く行かない。
信じるべきものを見失いかけていた。
酒々井
「信頼ってのは口で言うほど簡単じゃないんだよね。
思い描いた通りにならないと、人は不安を覚える。
その不安から逃れるように要因を探し始める。
その矛先が、監督に向かない事を祈るよ。
サポーターが監督を疑い始めると、その空気は選手たちに伝わる。
疑念を抱き始めたらなかなか止まらない。
まぁ、とは言えサポーターなんてそんなもんだ。
チームの為に自分の感情を抑えろなんて、虫の良い話だな。」
酒々井は淡々と語る。
何が正しいのかを教えてくれそうで、いつも最終的には人それぞれだと答えを避けるように話を終える。
きっと、これ以上聞いてみた所で、これ以上の答えが出てこないのが猿楽場酒々井(さかくばしすい)という男だった。
そして、それを知っている千種だからこそ、自分の想いを言葉にして返した。
千種
「ちーは....いいんだもん。
応援するって決めたから。
みんなこうするべきとか、 サポーターはこうあるべきとか、そーゆーのよくわかんないし。
でも、自分はこうありたいなって思ったりはする。
ちーはちーの事嫌いになりたくないから。」
それを聞いて一瞬少し面食らったような表情をした後、酒々井はふふっと笑う。
そして場面はピッチに戻り...
チームメイトに一通り声をかけたあと、工藤がロッカールームに向かいながら呟く。
工藤
「大丈夫。このチームはまだまだ強くなれる。
だからこそ俺はここに来たんだ。
...俺が身につけてきたものを全てジェフに...!!」
Fin
※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。

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