▼この記事を読むのにかかる時間/約6分
選手たちのロッカールームから。
スタジアムに続く通路。
そこには、ジェフを支える関係者たちの熱いメッセージが掲げられていた。
チームが苦しんでいる。
それは、選手もそうだし、監督もそうだし、サポーターもそうだし、当然クラブ関係者も同じ気持ちだ。
チームが、ジェフが苦しむとはそういう事だ。
ベンチ入り禁止処分のエスナイデルに代わりチームの指揮を執るギジェルモヘッドコーチは、なんとかチームを奮い立たせようと檄を飛ばす。
平日開催にも関わらずスタジアムに駆け付けた多くのサポーターに応える為、強い気持ちを持ってピッチへと向かう。
千種(ちぐさ)
「気迫は十分。
連敗で苦しい状況は変わらないけれど、それでも選手たちの顔は上がってる。
もちろん、心の底から。」
今日もいつも通りSA自由席の2階、最前列から視線を送る小食土千種(やさしどちぐさ)。
隣には、これまたいつも通り猿楽場酒々井(さかくばしすい)が座っている。
酒々井
「キミがそう言うんだからそうなんだろうね。
良い知らせほど信じた方が良いもんだ。」
そして円陣を解き、自分のポジションに向かう選手の中に、特別な想いを胸に秘めた男がいた。
工藤
「......懐かしいなぁ。
こうしてフクアリで、円陣して、そして自分のポジションに向かってダッシュ。
...気合が入らないわけがない。」
大きく深呼吸をし、胸のエンブレムを叩き、そして両手の人差し指を天に向けて。
また一つ大きく息を吐き出した。
ピーーーーーーー!!
甲府の5-4-1のシステムに対して、ジェフは4-3-3。
⑱熊谷を中盤の底に置いた、アンカースタイルだった。
インサイドハーフに㉒工藤と㉕茶島が並ぶ。
開始3分。
甲府のスローインから、シンプルに前線にボールを蹴り込まれると、④エベルトが前に出た所と入れ違いになり、完全フリーで裏に抜け出される!
㉘乾が必死に追いかけてファールにならないようにすれすれのスライディングを仕掛けるもかわされ、シュートを許す!!
ヒュン...!
しかし、このシュートが僅かに枠を逸れる!
実況
「あぁぁぁぁぁーーーーっと!!!甲府の千載一遇のチャンス!!これを沈める事が出来ないーーーー!!!!」
千種
「ちょっとちょっとちょっと!!!
やめてよ心臓に悪いんだから!!」
出会い頭の一撃をなんとか逃れたジェフ。
⑱熊谷がいつも通り最終ラインの中央に落ちて、両CBがワイドに開く。
インサイドハーフの2人がボランチの位置まで下りてきてゲームを作る。
この日のジェフはロングボールが少なく、細かくボールを繋ぎながらチャンスを伺う形。
だが、そんな中で次の決定機を掴んだのも甲府だった。
15分。
右サイドで甲府にフリーキックを与えると、高めのクロスを放り込まれ、これに合わせたヘディングがふわりと逆サイドネットに向かって飛んで行った。
ふぁさ...
立ち尽くすGKロドリゲス。
いつも通りだった。
前半20分までに失点する形は、もはやいつも通りと言える状況だった。
とても喜べたものでも無ければ、笑って見過ごせる事でも無い。
だが、誰しもの脳裏をよぎった。
「またか...」と。
そんな負の感情をかき消すようにサポーターは声を張り上げる。
酒々井
「...試合中は余計な事を考えるわけには行かないよね。
負けがこんでくると、怒りの矛先は監督に向かう。どうしても。
サポーターにとっては選手こそが正義だからね。」
少し遠い目をして酒々井は語るが、千種はピッチを見つめたまま強い口調で答える。
千種
「監督だって信じる!
選手が監督を信じようって言ってるのに、そこにサポーターが水を差すわけにはいかないもん!」
ピッチ上の選手たちも、顔は下がっていなかった。
清武
「(いちいち顔下げてなんかいられるかよ...!
こっちは闘いたくてウズウズしてたし、スタメン約束されてるわけでもねぇし、反撃の時間はまだまだある。)」
⑧清武は特に気合が入っているようだった。
守備にも積極的に参加し、接触プレーが続く中でも、"喧嘩を買う"ような事は無かった。
18分。
左サイドで㉒工藤がハーフスペースへ飛び出すと、そこからグラウンダーのクロス!
⑪船山が飛び込むも相手に体を当てられ僅かに届かず...!
船山
「..........くそ!」
一言吐き捨てると、すぐさまポジションに戻っていく。
20分。
左サイドで⑧清武がドリブルを仕掛けるも、これは空いてDFにブロックされる。
しかしこのこぼれ球が㉘乾の下へ転がり、キックフェイントでタイミングをずらして、鋭いグラウンダーのクロスをボックス内の⑨ラリベイの足元へ届ける!
⑨ラリベイは相手DFからボールを守るように体を使うと、すかさずボールを下げた。
ラリベイ
「.............キミのシュートセンスなら...!」
ボックスの僅かに外に優しいボールが転がっていく。
その先には...
茶島
「........シュートは...結構得意!」
ズシャァ!!!
このボールをダイレクトで蹴り返すと、水を含んだピッチを這うようにして鋭いシュートがニアを突き抜けた!!
早々の同点弾にスタジアムのボルテージも上がる!
実況
「茶島ぁぁぁぁぁ!!!ニアサイドを射抜く一撃!!ジェフ千葉早くも追いついたぁぁ!!!」
静かにガッツポーズを取る茶島。
清武
「うまっ!!」
ラリベイ
「さすがだヨ!!キミなら間違いなく枠を捉えると思っタ!!」
乾
「チャジ君が枠を外す想像する方が難しいわ...」
これでスコアは1-1。
だが追いついた形のジェフに分があるかに思えたものの、そう簡単にはいかなかった。
その後もボールは持てるが決定機を作り出せない、いつもの展開。
シュート数は甲府の方が上回っていた。
それでも、ピッチ上の選手たちの表情からは少しばかり余裕を感じられる部分もあった。
それは、この男がいたからなのかもしれない。
工藤
「いやぁ~!惜しかったなタカユキ!やろうとしてる事はわかる。あれしかないよな~。」
工藤
「キヨ!あっちに欲しかったんだよな!悪い、感じれてなかったわ...!」
㉒工藤がしきりにチームメイトに声をかけていた。
コミュニケーションを図りながら、高精度のパスを繰り返す。
「何とかなるかもしれない。」
「むしろ、何とかなる気しかしない。」
そう思わせる何かが漂っていた。
中盤でパスを受けては捌いての繰り返し。
気が付くとするするとポジションを上げ、楔の受け手に。
ボールを受ける前には必ず首を振る基本を忠実にこなし、ワンタッチでのパスを次々と通していった。
いつの間にか、ピッチは㉒工藤を中心として回り始める。
㉒工藤がボールを持った瞬間、チームメイトも、サポーターも期待に胸が高鳴った。
45分には、左サイドからバイタルエリアの㉒工藤にボールが入る。
この瞬間にも周囲を確認し、ワンタッチで⑨ラリベイへ。
更にすぐさま動き直しリターンを受け取ると、更にダイレクトで中央動き出した⑪船山を逃さなかった!
これは惜しくも相手DFに詰め寄られゴールとはならなかったが、十分に可能性を感じさせるプレーだった。
工藤
「くぁ~、ダメか!さすがに狭いもんな!でもタカユキ、あの瞬間よく動き出してたな!いつでもゴールをイメージ出来てる証拠だ!」
㉒工藤は笑顔を絶やさない。
千種
「クドちゃんに引きずられて、周りの選手の動きが良くなってる...?
いや、周りの選手の動きを良いものにしてあげてる...?
みんなが生かされてる感じ...!」
酒々井
「(この子...クドちゃんって...)」
ピッチ上の選手たちこそが、そのスゴさを一番感じていた。
船山
「(スゲー...いつでもピッチ上の事を把握してやがる...
動けばパスが出てくる!)」
清武
「(一つ一つの動作のクオリティが高い...
ちょっとしたタイミングをずらすとか、足先だけのテクニックじゃない...!)」
前半を1-1で折り返す事になったジェフ。
ハーフタイムを挟んで後半戦に向かう。
そして㉒工藤は、試合開始前と同じように、両手の人差し指を天に向けて大きく息を吐き出す。
工藤
「ふぅ~...
さーて、フクアリでサッカー出来る贅沢を...」
正面をグッと見つめ直し、ゴール裏を真っすぐ見据えていた。
続く
※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の分析はいつも通り行っておりますので試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。
選手たちのロッカールームから。
スタジアムに続く通路。
そこには、ジェフを支える関係者たちの熱いメッセージが掲げられていた。
チームが苦しんでいる。
それは、選手もそうだし、監督もそうだし、サポーターもそうだし、当然クラブ関係者も同じ気持ちだ。
チームが、ジェフが苦しむとはそういう事だ。
ベンチ入り禁止処分のエスナイデルに代わりチームの指揮を執るギジェルモヘッドコーチは、なんとかチームを奮い立たせようと檄を飛ばす。
平日開催にも関わらずスタジアムに駆け付けた多くのサポーターに応える為、強い気持ちを持ってピッチへと向かう。
千種(ちぐさ)
「気迫は十分。
連敗で苦しい状況は変わらないけれど、それでも選手たちの顔は上がってる。
もちろん、心の底から。」
今日もいつも通りSA自由席の2階、最前列から視線を送る小食土千種(やさしどちぐさ)。
隣には、これまたいつも通り猿楽場酒々井(さかくばしすい)が座っている。
酒々井
「キミがそう言うんだからそうなんだろうね。
良い知らせほど信じた方が良いもんだ。」
そして円陣を解き、自分のポジションに向かう選手の中に、特別な想いを胸に秘めた男がいた。
工藤
「......懐かしいなぁ。
こうしてフクアリで、円陣して、そして自分のポジションに向かってダッシュ。
...気合が入らないわけがない。」
大きく深呼吸をし、胸のエンブレムを叩き、そして両手の人差し指を天に向けて。
また一つ大きく息を吐き出した。
ピーーーーーーー!!
甲府の5-4-1のシステムに対して、ジェフは4-3-3。
⑱熊谷を中盤の底に置いた、アンカースタイルだった。
インサイドハーフに㉒工藤と㉕茶島が並ぶ。
開始3分。
甲府のスローインから、シンプルに前線にボールを蹴り込まれると、④エベルトが前に出た所と入れ違いになり、完全フリーで裏に抜け出される!
㉘乾が必死に追いかけてファールにならないようにすれすれのスライディングを仕掛けるもかわされ、シュートを許す!!
ヒュン...!
しかし、このシュートが僅かに枠を逸れる!
実況
「あぁぁぁぁぁーーーーっと!!!甲府の千載一遇のチャンス!!これを沈める事が出来ないーーーー!!!!」
千種
「ちょっとちょっとちょっと!!!
やめてよ心臓に悪いんだから!!」
出会い頭の一撃をなんとか逃れたジェフ。
⑱熊谷がいつも通り最終ラインの中央に落ちて、両CBがワイドに開く。
インサイドハーフの2人がボランチの位置まで下りてきてゲームを作る。
この日のジェフはロングボールが少なく、細かくボールを繋ぎながらチャンスを伺う形。
だが、そんな中で次の決定機を掴んだのも甲府だった。
15分。
右サイドで甲府にフリーキックを与えると、高めのクロスを放り込まれ、これに合わせたヘディングがふわりと逆サイドネットに向かって飛んで行った。
ふぁさ...
立ち尽くすGKロドリゲス。
いつも通りだった。
前半20分までに失点する形は、もはやいつも通りと言える状況だった。
とても喜べたものでも無ければ、笑って見過ごせる事でも無い。
だが、誰しもの脳裏をよぎった。
「またか...」と。
そんな負の感情をかき消すようにサポーターは声を張り上げる。
酒々井
「...試合中は余計な事を考えるわけには行かないよね。
負けがこんでくると、怒りの矛先は監督に向かう。どうしても。
サポーターにとっては選手こそが正義だからね。」
少し遠い目をして酒々井は語るが、千種はピッチを見つめたまま強い口調で答える。
千種
「監督だって信じる!
選手が監督を信じようって言ってるのに、そこにサポーターが水を差すわけにはいかないもん!」
ピッチ上の選手たちも、顔は下がっていなかった。
清武
「(いちいち顔下げてなんかいられるかよ...!
こっちは闘いたくてウズウズしてたし、スタメン約束されてるわけでもねぇし、反撃の時間はまだまだある。)」
⑧清武は特に気合が入っているようだった。
守備にも積極的に参加し、接触プレーが続く中でも、"喧嘩を買う"ような事は無かった。
18分。
左サイドで㉒工藤がハーフスペースへ飛び出すと、そこからグラウンダーのクロス!
⑪船山が飛び込むも相手に体を当てられ僅かに届かず...!
船山
「..........くそ!」
一言吐き捨てると、すぐさまポジションに戻っていく。
20分。
左サイドで⑧清武がドリブルを仕掛けるも、これは空いてDFにブロックされる。
しかしこのこぼれ球が㉘乾の下へ転がり、キックフェイントでタイミングをずらして、鋭いグラウンダーのクロスをボックス内の⑨ラリベイの足元へ届ける!
⑨ラリベイは相手DFからボールを守るように体を使うと、すかさずボールを下げた。
ラリベイ
「.............キミのシュートセンスなら...!」
ボックスの僅かに外に優しいボールが転がっていく。
その先には...
茶島
「........シュートは...結構得意!」
ズシャァ!!!
このボールをダイレクトで蹴り返すと、水を含んだピッチを這うようにして鋭いシュートがニアを突き抜けた!!
早々の同点弾にスタジアムのボルテージも上がる!
実況
「茶島ぁぁぁぁぁ!!!ニアサイドを射抜く一撃!!ジェフ千葉早くも追いついたぁぁ!!!」
静かにガッツポーズを取る茶島。
清武
「うまっ!!」
ラリベイ
「さすがだヨ!!キミなら間違いなく枠を捉えると思っタ!!」
乾
「チャジ君が枠を外す想像する方が難しいわ...」
これでスコアは1-1。
だが追いついた形のジェフに分があるかに思えたものの、そう簡単にはいかなかった。
その後もボールは持てるが決定機を作り出せない、いつもの展開。
シュート数は甲府の方が上回っていた。
それでも、ピッチ上の選手たちの表情からは少しばかり余裕を感じられる部分もあった。
それは、この男がいたからなのかもしれない。
工藤
「いやぁ~!惜しかったなタカユキ!やろうとしてる事はわかる。あれしかないよな~。」
工藤
「キヨ!あっちに欲しかったんだよな!悪い、感じれてなかったわ...!」
㉒工藤がしきりにチームメイトに声をかけていた。
コミュニケーションを図りながら、高精度のパスを繰り返す。
「何とかなるかもしれない。」
「むしろ、何とかなる気しかしない。」
そう思わせる何かが漂っていた。
中盤でパスを受けては捌いての繰り返し。
気が付くとするするとポジションを上げ、楔の受け手に。
ボールを受ける前には必ず首を振る基本を忠実にこなし、ワンタッチでのパスを次々と通していった。
いつの間にか、ピッチは㉒工藤を中心として回り始める。
㉒工藤がボールを持った瞬間、チームメイトも、サポーターも期待に胸が高鳴った。
45分には、左サイドからバイタルエリアの㉒工藤にボールが入る。
この瞬間にも周囲を確認し、ワンタッチで⑨ラリベイへ。
更にすぐさま動き直しリターンを受け取ると、更にダイレクトで中央動き出した⑪船山を逃さなかった!
これは惜しくも相手DFに詰め寄られゴールとはならなかったが、十分に可能性を感じさせるプレーだった。
工藤
「くぁ~、ダメか!さすがに狭いもんな!でもタカユキ、あの瞬間よく動き出してたな!いつでもゴールをイメージ出来てる証拠だ!」
㉒工藤は笑顔を絶やさない。
千種
「クドちゃんに引きずられて、周りの選手の動きが良くなってる...?
いや、周りの選手の動きを良いものにしてあげてる...?
みんなが生かされてる感じ...!」
酒々井
「(この子...クドちゃんって...)」
ピッチ上の選手たちこそが、そのスゴさを一番感じていた。
船山
「(スゲー...いつでもピッチ上の事を把握してやがる...
動けばパスが出てくる!)」
清武
「(一つ一つの動作のクオリティが高い...
ちょっとしたタイミングをずらすとか、足先だけのテクニックじゃない...!)」
前半を1-1で折り返す事になったジェフ。
ハーフタイムを挟んで後半戦に向かう。
そして㉒工藤は、試合開始前と同じように、両手の人差し指を天に向けて大きく息を吐き出す。
工藤
「ふぅ~...
さーて、フクアリでサッカー出来る贅沢を...」
正面をグッと見つめ直し、ゴール裏を真っすぐ見据えていた。
続く
※選手のセリフ、心情は全て妄想です。フィクションです。
試合の分析はいつも通り行っておりますので試合の流れ自体はノンフィクションですが、何卒ご留意下さい。
コメント